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生成 AI で読むべき論文を見つける

作成者: 蛯谷 夏海|2025/8/13 (水)

新たな政策や企画を考えるときの検討材料の1つとして、学術論文があります。ただ、Google Scholar や CiNii など、無料の論文検索ツールはあるものの、検索語を適切に設定したり、検索した結果から参考になる論文をピックアップしたりするのはなかなかに骨が折れるものです。そこで本記事では、Elicit という自然言語処理を活用した AI ツールと Chat GPT を組み合わせた論文検索の方法を紹介します。

論文というと少し身構えてしまうかもしれませんが、上手く使いこなせれば良質な情報源になるかもしれません。ぜひお試しください。

※Elicit の使い方については、公式の Help ページにも記載があるほか、日本語でブログ記事を書かれている方も多数いるようなので、そうしたものも参考にしてみてください。

 

以下のプロンプトを Elicit に入力し、最下部の「ユーザーの政策テーマ」に考えたいテーマやカテゴリ名を入れます。

# 目的
ユーザーが入力するのは「政策テーマ」だけ。足りない条件は既定値から自動補完し、Elicit(Find Papers)に1回で投入できる検索文を1〜3本(目的別)生成してください。

## あなたの役割
政策調査アシスタント。自然文の検索文を作る。日本語で出力し、英語の同義語を併記する。

## 既定値(ユーザー指定が無い場合はこれを使う)
- 対象:一般(個人/企業/自治体など、テーマに合わせて最も自然な主体に補正)
- 地域:日本 + OECD
- 期間:2015–2025
- 研究デザイン優先:DiD, RDD, IV, panel fixed effects + review/meta
- フィルタ:+year:>2014 +oa:true +citations:>10
- 言語:検索文は日本語。英語の同義語を末尾に「同義語: ... / ...」形式で併記

## アウトカム推定ルール(簡易辞書)
テーマから代表アウトカムを自動選定(最大2つまで)。
- 気候/エネルギー/炭素 → 温室効果ガス排出、エネルギー消費、価格/市場
- 森林/生態 → 森林減少率、炭素蓄積、土地利用
- 教育 → 標準化テスト得点、就学率
- 労働/雇用 → 雇用率、賃金、生産性、労働時間
- 産業/中小企業 → 生産性、投資、売上、倒産
- 保健/医療 → 死亡率、罹患率、医療費
- 交通/都市 → 交通量/渋滞、事故、モーダルシフト、地価
- 住宅/福祉 → 家賃、住宅供給、貧困率
- 税/社会保障 → 税収、逆進性、分配影響
(該当が複数なら用途別クエリに分岐)

## 出力仕様(厳守)
1) サマリー:補完後のパラメータを1行で明示
   - [政策テーマ] / [アウトカム] / [対象] / [地域] / [期間] / [研究デザイン]
2) 同義語(英語中心で各3–6語)
   - 政策:..., ...
   - アウトカム:..., ...
3) Elicit(Find Papers)用 検索文(目的別 最大3本)
   - A 因果効果(効果量・不確実性を拾う)
   - B 実装・コスト(実務・費用対効果)
   - C 公平性・副作用(分配/スピルオーバー)
   各行は日本語1本で、末尾に同義語を併記し、最後に必要なフィルタ(+year, +oa:true, +citations)を付与。
4) 注記(1行):もし狙いが違えば「費用対効果」「実施」「国際比較」などに置換できる旨を示す。

## 追加規則
- 「最新重視」「直近10年」などの語がユーザー入力に含まれる場合、+year を>2017、+citations を>5に調整。
- 「日本限定」「自治体」などが含まれる場合、地域を日本中心に補正。
- 同義語は政策・アウトカムとも英語3–6語。冗長な専門略語は5語以内。
- 出力は簡潔に。検索文はコピペできるようコードブロックで。

## 入力
ユーザーは1行で「政策テーマ」を与える(例:「カーボンクレジット」「学級規模削減」)。

--- ここから実行 ---
ユーザーの政策テーマ: 

今回は、「カーボンクレジット」という政策テーマを入れてみました。

「クレジットが排出量や価格に与える影響」「費用対効果」「クレジット導入による副作用」など、様々な論点があることがわかりました。

1. サマリー:カーボンクレジット(排出量取引・オフセット) / 温室効果ガス排出・価格/市場(許可証価格・流動性) / 企業・自治体(排出事業者) / 日本+OECD / 2015–2025 / DiD, RDD, IV, パネル固定効果 + レビュー/メタ

2. 同義語
* 政策:carbon credits, emissions trading, cap-and-trade, carbon offset, ETS
* アウトカム:greenhouse gas emissions, allowance price, market liquidity, trading volume, emissions intensity

3. Elicit(Find Papers)用 検索文
A 因果効果
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カーボンクレジット制度(排出量取引・オフセット)の導入/強化が温室効果ガス排出と許可証価格に与える因果効果を検証(差の差・RDD・IV・パネル固定効果、レビュー/メタ)。日本+OECD、2015–2025。 同義語: carbon credits / emissions trading / cap-and-trade / carbon offset / ETS / greenhouse gas emissions / allowance price / market liquidity / trading volume / emissions intensity +year:>2014 +oa:true +citations:>10
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B 実装・コスト
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日本・OECDのカーボンクレジット/ETSの実装とコスト(MRV・配分・コンプライアンス負担)および費用対効果、市場流動性/出来高の評価(レビュー含む)。2015–2025。 同義語: carbon credits / emissions trading / cap-and-trade / carbon offset / ETS / greenhouse gas emissions / allowance price / market liquidity / trading volume / emissions intensity +year:>2014 +oa:true +citations:>10
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C 公平性・副作用
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カーボンクレジット/ETSの公平性・副作用:企業規模/地域/所得階層の分配影響、リーケージや競争力・スピルオーバーの定量評価(差の差等の準実験・パネル固定効果、レビュー/メタ含む)。日本+OECD、2015–2025。 同義語: carbon credits / emissions trading / cap-and-trade / carbon offset / ETS / greenhouse gas emissions / allowance price / market liquidity / trading volume / emissions intensity +year:>2014 +oa:true +citations:>10
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4. 注記:狙いが違えば、キーワード(因果効果/実装・コスト/公平性)を「費用対効果」「実施」「国際比較」「制度設計」などに置換して再検索してください。

 

「3. Elicit(Find Paper)用 検索文」で出力されたプロンプトを一読してください。狙いと違う点があれば、その点を指摘しながら、イメージに合う検索文を作り上げます。検索文が出来たら、Elicit に入力すると、参考になりそうな論文が高精度で返ってくると思います。

注意・ポイント

抽象語だけで聞くと総説が多くなるようなので、対象・地域・期間などを出来るだけ具体化した方がより精度は上がるようです。また、肯定的研究ばかりにならないよう、検索文に「反証/否定的エビデンス」を含めるのも有効です。

最後に、ハルシネーションを起こす可能性もあるため、最終的には目視で出力内容を確認することを強くお勧めします。(あくまで検索に係る手間や労力を短縮するという目的での使用をお勧めします。)

 

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