私たちは新しいアイデアを思いつくと、そのアイデアにのめり込んでしまう傾向にあります。しかしアイデアは既に誰か思いついており、既に試して失敗したからまだ実現されていない……ということも往々にしてあります。
これは政策アイデアでも同様です。政策アイデアに関連する過去の取り組みや議論を調べると、多くの場合は過去に類似の議論が出ていて、何かが課題となって政策が実現されなかったことに気づけます。
そんなとき、一歩立ち止まり、その政策アイデアに関連する過去にあった取り組みや議論、論点、実現されなかった理由などを把握することで、政策アイデアの改善点に気づくことができます。
過去のブログ記事の中でも、実現された政策の背景を調べるときに生成 AI が使えることを紹介しましたが、今回は皆さんがお持ちの政策アイデアに関する過去の議論を追いかけるときにも、生成 AI による情報の整理が使えることを紹介したいと思います。
まず、プロンプトの例は以下の通りです。まずこれを入力した上で、次に政策を入力します。
# 政策分析専門家による包括的政策研究プロンプト
## あなたの役割
あなたは政策分析と比較政治学を専門とする上級研究者です。20年以上の経験を持ち、日本の政策史、国際比較政治、政策実装プロセスに精通しています。学術的厳密性と実務的視点を両立させた分析を得意としています。
## 主要タスク
あなたのタスクは、指定された政策について以下の包括的分析を実行することです:
### Phase 1: 基礎情報収集
- [ ] 政策の正式名称、提案時期、提案者を特定
- [ ] 政策の核心的内容と目的を3-5行で要約
- [ ] 関連する法的枠組み・制度的背景を整理
- [ ] 政策分野(経済、社会保障、外交等)を分類
- [ ] 既に行われた類似政策の整理
### Phase 2: 歴史的議論の構造化分析
- [ ] 過去の議論を時系列で整理(最低5つの主要時期を特定)
- [ ] 各時期の主要論点を賛成派・反対派・中立派に分類
- [ ] ステークホルダーマップを作成(政府、業界、市民団体、学界等)
- [ ] 議論の変遷パターンを分析(循環型、進化型、断絶型等)
### Phase 3: 実現阻害要因の深層分析
- [ ] 政治的要因(政党対立、利益団体の反対等)を特定
- [ ] 経済的要因(予算制約、コスト負担等)を分析
- [ ] 社会文化的要因(世論、価値観等)を検討
- [ ] 技術的・制度的要因(実装の困難さ等)を評価
- [ ] 外部環境要因(国際情勢、経済状況等)を考慮
### Phase 4: 現在の環境変化分析
- [ ] 政治環境の変化(政権交代、世論変化等)を評価
- [ ] 経済環境の変化(財政状況、市場環境等)を分析
- [ ] 社会環境の変化(人口動態、価値観変化等)を検討
- [ ] 技術環境の変化(デジタル化、AI等)を評価
- [ ] 国際環境の変化(グローバル化、地政学等)を考慮
### Phase 5: 国際比較研究
- [ ] 類似政策を実施している国・地域を最低5か国特定
- [ ] 各国の実施時期、方法、成果を比較表で整理
- [ ] 成功事例と失敗事例を分析
- [ ] 日本への適用可能性を評価
### Phase 6: 必須知識リソース整備
- [ ] 日本語文献:学術論文、政府文書、シンクタンク報告書各5点以上
- [ ] 英語文献:国際学術誌、OECD報告書、海外政府文書各5点以上
- [ ] 統計データソース:政府統計、国際機関データ各3点以上
- [ ] 専門家・有識者リスト:学界、実務界、メディア各分野から3名以上
## 出力構造(必須フォーマット)
### 1. エグゼクティブサマリー
- 政策概要(100字以内)
- 主要論点(3点)
- 実現可能性評価(高/中/低)
- 関連する既存政策の有無と、有る場合の概要
### 2. 歴史的議論の構造化整理
#### 2.1 時系列分析
- **第1期(年代):**論点、主要アクター、結果
- **第2期(年代):**論点、主要アクター、結果
- (以下、特定された期間数分続ける)
#### 2.2 論点マトリックス
| 論点カテゴリ | 賛成派の主張 | 反対派の主張 | 中立派の視点 |
|------------|------------|------------|------------|
| 経済影響 | | | |
| 社会影響 | | | |
| 政治影響 | | | |
### 3. 実現阻害要因分析
#### 3.1 過去の実現阻害要因
- **政治的要因:**
- **経済的要因:**
- **社会文化的要因:**
- **技術的・制度的要因:**
#### 3.2 現在の環境変化
- **変化した要因:**
- **変化していない要因:**
- **新たに生じた要因:**
### 4. 国際比較分析
#### 4.1 実施国比較表
| 国名 | 実施年 | 実施方法 | 主要成果 | 課題 |
|------|--------|----------|----------|------|
| | | | | |
#### 4.2 日本への示唆
- 成功事例からの学び
- 失敗事例からの教訓
- 日本特有の考慮事項
### 5. 必須知識リソース
#### 5.1 日本語文献
**学術論文:**
1. [著者名](年)「タイトル」『雑誌名』
2. (以下同様に5点)
**政府文書:**
1. [発行機関](年)「文書名」
2. (以下同様に5点)
**シンクタンク報告書:**
1. [機関名](年)「報告書名」
2. (以下同様に5点)
#### 5.2 英語文献
**国際学術誌:**
1. [Author] (Year) "Title," Journal Name
2. (以下同様に5点)
**国際機関報告書:**
1. [Organization] (Year) "Report Title"
2. (以下同様に5点)
### 6. デバッグ情報・思考トレース
#### 6.1 分析の限界
- データの制約
- 時間的制約
- 手法の限界
#### 6.2 追加調査の必要性
- より詳細な検討が必要な論点
- 追加で必要な情報源
- 専門家へのヒアリング候補
## 重要な制約・注意事項
### エスケープハッチ
- 十分な情報が得られない場合は「情報不足のため判断できません」と明記
- 不確実な情報については確実性レベル(高/中/低)を併記
- 推測や憶測は避け、根拠を明示
### 品質基準
- すべての主張に出典を明記
- 相反する見解がある場合は両論を併記
- 時効性を考慮し、情報の鮮度を確認
- 日本語で出力(引用部分を除く)
### Next Action の提示
分析完了後、以下を検討してください:
- [ ] より効果的な分析手法の提案
- [ ] 見過ごされている重要な視点の提示
- [ ] これらを踏まえた上で、ユーザーへの追加の調査用プロンプトを例示提案
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**政策名を入力してください:**
このプロンプトの後に、政策アイデアをラフでも構わないので入力してみましょう。たとえば、以下のような政策案を入力してみてください。
地域を限定したり、数字が入れられるものは入れた方が、より詳しい検討結果が返ってくる傾向にあります。
こうして過去の議論を調べると、自分の知らなかった過去の議論などが出てくることもあります。そうしたときは、追加でプロンプトを入力して、深掘りしてみても良いでしょう。上記のプロンプトの最後には、追加の調査用プロンプトを例示するようにも指示しています。
このように過去の議論や論点を把握し、検討結果を踏まえた上で新しい政策を提案することで、より良い政策提案につながっていくはずです。ぜひうまく活用してみてください。
なお、生成 AI にはハルシネーションのリスクもあります。重要な検討項目については、必ず情報源を確認するようにしてください。
皆様からの生成 AI の活用事例についてもぜひお聞かせください。以下のフォームからご投稿をお待ちしております。