民間・市民が政策を起業していく大まかな流れは以下のようなものです。
これらのステップを適切に行うことで、社会課題を効果的に解決できる政策を作り、実現することができます。しかし政策になじみのない多くの人たちは、社会課題の分析方法や持ち込み先の調べ方に詳しいわけではありません。
そこで PEP では、最新の大規模言語モデル(LLM)を活用し、政策課題分析から提案先の探索 (1 ~ 3) までの一連の動きをツール上で行うプロトタイプを作りました。
このプロトタイプを使うことで、社会課題の分析から持ち込み先の探索までの一連のステップを、ツールに従って簡易的に体験できるようになります。なお、本プロトタイプはあくまで社会課題解決のステップを体験するものであり、正確な社会課題分析を目指すツールではありません。初期的な分析の際に参考にするためのツールとしてご活用いただければと思います。
プロトタイプは以下の URL からアクセス可能です。
https://pep-issue-analysis-navigator.replit.app
まずは、画面左側の「課題分析」パネルに、分析したい社会課題および課題の対象となる地域(任意)を入力してください。「課題例」をクリックすることで既に用意されている課題を入力したり、「課題例を生成」をクリックすることで LLM にその場で分析対象となる社会課題を生成してもらうことも可能です。
社会課題の分析では、「原因の深掘りをする」「原因同士の因果関係を把握する」ことが求められます。
分析をするときは、表面的に見えている社会課題の原因を深掘りしていきます。ここではロジックツリーと呼ばれるような形式で深掘りしていくことになります。
本プロトタイプでは、指定した原因(ノード)をクリックし、それに対して「さらに深掘り分析」ボタンを押すことで、原因の深掘りを LLM が実施して、ツリーに反映し、深掘りを実行します。
社会課題は原因同士が絡み合い、ループになっていることも多くあります。これを理解し、どの原因から手をつければ効果的かを特定するために、社会課題の分析では「因果ループ図」や「課題構造マップ」を描くことがよくあります。
本プロトタイプでは、画面に表示されている原因(ノード)全体を LLM が分析し、因果関係を推測して、図示する機能を備えています。「表示設定」から表示モード「因果図」をクリックしてください。
社会課題を分析し、因果関係等を踏まえた上で、特定の原因を解決するための政策を考えます。
本プロトタイプでは、原因の解決策となるような政策を LLM が推論し、その結果を画面下部に返すようにしています。特定の原因(ノード)をクリックして「政策候補」ボタンをクリックすることで、その原因を解決するような政策案を LLM が考案します。
政策アイデアを考案したら、それが効果的かどうかだけでなく、財政、公正性などを、多元的に検証する必要があります。
本プロトタイプでは、生成された政策案について、関連する国会や地方議会の議事録、シンクタンクのレポート等を検索する機能が実装されています。「過去の関連議論」ボタンをクリックすることで検索を実行可能です。
また、生成された政策案について多角的に検証するために、過去に PEP で作成した政策討論シミュレータ(PEP ブログ内での紹介記事はこちら)への誘導のボタンも用意されています。
政策起業を行う際には、考案した政策案を実現させるための働きかけも重要です。本ツールでは、考案した政策案について、どのような提案先が有効となるかを LLM が分析する機能も備えています。
生成された政策案について「提言先候補」をクリックすることで、 LLM が提言先として有効だと思われる議員や官僚の候補を提示します。
※ LLM は政策提案先の検索において存在しない役職や人物を提示する可能性があります。ご自身によるインターネット検索などで裏付けすることを強く推奨します。
本ツールでは、特定した原因(ノード)に対して、その原因を解決しうるアプリ(スマートフォンアプリや Web アプリなどの SaaS 系ソリューション)を提案する機能も備えています。
原因ノードを選択し「アプリ候補」をクリックしてください。選択した原因を解決しうるアプリのアイデアが画面下部に表示されます。
生成されたアプリについて 「PRDを生成」ボタンをクリックすることで、アプリのプロダクト要求仕様書(PRD)が生成されます。生成された PRD を Replit などの Vibe Coding ツールに入力することでアプリの開発が可能です。
本記事で紹介した生成 AI を用いた政策課題 分析・提言ナビゲーターが広く活用されることで、政策立案や議論の質が高まり、より多くの人々が社会課題解決に参加できる環境をつくり出すことを PEP は目指しています。もちろん、生成 AI による分析には限界や注意点も存在しますが、特にこれまで政策による社会課題解決の経験が少ない方々にとって、初期的な分析の際に参考になるようなツールとなっていれば幸いです。
本プロトタイプを活用された際にはぜひ pep@ihj.global やお問い合わせフォームまでご一報ください。