PEP 最新情報 | PEP

『政策・社会課題ステークホルダーマップ』のプロトタイプを公開しました

作成者: PEP 事務局|2025/9/5 (金)

はじめに

公共政策や社会課題は多くの人たちが関わるものであり、多くのステークホルダーがいます。その方々とコミュニケーションをうまく取れなければ、政策は良くなりませんし、実現もできません。

そこで私たちは政策起業していく上で、その政策に関わる人たちはどういった人たちで、そうした人たちがどのように関係しながら社会が動いているのか、という全体像を把握することが重要です。その上で、そうした人たちにどう関与していけば良いのかを考える必要もあるでしょう。

PEP ではこれまで討論シミュレータを用意しましたが、今回 PEP では、最新の大規模言語モデル(LLM)を活用し、ステークホルダー間のつながりの全体像をざっくりとつかみ、そうした人たちにどのように関与していくのかを考えるためのコンセプトプロトタイプを開発しました。

本プロトタイプは以下の URL からアクセス可能です。なお、本プロトタイプはあくまでステークホルダーの広がりや相互関係を、生成 AI の理解する一般的な範囲において大まかに理解するためのものであり、実際の相互関係とは大きく異なる可能性が高いことにはご留意ください。詳細な分析やステークホルダーの網羅的把握を目的としたものではなく、「こうしたステークホルダーマップを把握することが重要である」という学習と、「一般的にはこうした関係性がありそうだ」という叩き台としての利用を想定しています。

https://pep-simple-stakeholder-map.replit.app

本ツールの使い方

1️⃣ 政策や解決案のアイデアの入力

政策や解決策の概要を入力してください。任意で対象となる地域も入力可能です。

💡 Tips

政策案を自動生成」ボタンをクリックすると、政策案と地域が自動で生成され入力されます。本ツールの挙動を確認したい場合にご活用ください。

2️⃣ 重視する影響力評価の調整

各ステークホルダーの優先度の計算方法を調整することも可能です。「影響力重み調整」から各パラメータの重みを調整することで、後述する「優先度ランキング」においてどのような性質のステークホルダーの優先度をより高くするかを調整できます。パラメータは、媒介中心性やサリエンス(Power/Legitimacy/Urgency)(Mitchell, Agle & Wood, 1997)を参考に、政策との適合性も重視できるような形で選出しました。

  • 中心性:ステークホルダーマップにおいてどれほど中心的な位置を占めるかを示すパラメータです。媒介中心性(Betweenness Centrality)を使用しています。
  • 権力:政策案・解決策案の実装において実際に行使できる影響力の強さを示すパラメータです。
  • 正統性:法的な権利・義務や制度設計といったの観点から、政策領域に関与する正統性をどの程度有しているかを示すパラメータです。
  • 緊急性:政策実現がそのステークホルダーに与える影響の緊急性や重大性を示すパラメータです。
  • 政策・解決策案への適合性:政策案への関心度合や、実現に向けた積極的関与の大きさを示すパラメータです。

3️⃣ 分析結果

分析する」ボタンをクリックすることで、入力した政策案・解決策案に関するステークホルダーマップが生成されます。ステークホルダーマップの画像ダウンロードや共有 URL の発行も可能です。

多様なステークホルダーが出力されるよう生成 AI モデルの Temperature*1 は 1 に設定しているため、分析の実行ごとに毎回表示が変わる可能性があります。

3.1 ステークホルダーの追加

マップ右上の「」ボタンをクリックすることで、マップに表示されていないステークホルダーの追加が可能です。追加されたステークホルダーの意見・立場や他ステークホルダーの関係性は、LLM によって自動的に補完されます。

3.2 優先度ランキング

先述した影響力の重み調整に基づいた、各ステークホルダーの優先度ランキングが表示されます。

3.3 意見・立場

ステークホルダーマップや優先度ランキングにおいてステークホルダーをクリックすることで、各ステークホルダーの詳細を確認できます。

「意見・立場」タブでは、一般的にそのステークホルダーが政策案・解決策案にどういった意見を持っていそうかを確認できます。

3.4 人物検索

そのステークホルダーカテゴリの中心的な人物を Web から検索します。

なるべく関係しそうな人を検索するようにしていますが、あくまで生成 AI による Web からの検索結果のため、Web に記載されている範囲内での推測の情報となります。また生成 AI ではハルシネーションが起こる関係で、実在しない人物や該当するステークホルダーとは関連の薄い人物が提示される可能性もあります。参考程度に使用してください。

3.5 関与方法

そのステークホルダーにアプローチを行う方法を生成 AI が提案します。上記「人物検索」と同様に生成 AI による結果であるため、実在しない窓口や効果的でない関与方法を提示される可能性があることは留意ください。

おわりに

本ツールはあくまで、課題にまつわるステークホルダーの広がりやその相互関係を大まかに把握するためのコンセプト検証用・学習用のプロトタイプです。事前知識のない政策領域へ取り組む際の最初のたたき台にするなど、教育目的での活用をお勧めいたします。

また使用する際は、人間によるファクトチェックや抜け漏れの確認、倫理やバイアスへの配慮も行うことを強くお勧めします。

本プロトタイプを活用された際にはぜひ pep@ihj.global やお問い合わせフォームまでご一報ください。

*1 Temperature: AI モデルが出力する文章の多様性やランダム性を調整するパラメータです。