海外シンクタンクの議論を日本語で読み解き、日本のビジネスや政策への含意を考えるポッドキャストシリーズ 「PEP Think」。
今回は、「戦略的自律の条件を再考する」と「気候変動時代の新たな制度設計」という2つのテーマから、同盟依存・技術依存の構造的リスクと、気候変動が迫る制度再設計の具体論を考える2本のエピソードをお届けします。
日米同盟が守ってくれる、リショアリングすれば中国依存のリスクは下がる、最先端 AI を開発する側が勝つ——こうした前提を一段掘り下げて問い直したエピソードです。元国家安全保障局長の岡野正敬氏による安全保障戦略論、中国人民解放軍の AI 軍事統合の実態、リショアリングでは解消されない知的依存の構造、そして中堅国が AI 導入競争で勝つための制度設計という4つの論点から、「戦略的自律」の条件を具体的に考えます。
Foreign Affairs の「Japan's National Security Reckoning — How Tokyo Is Adjusting to a More Dangerous World」をもとに、元国家安全保障局長の岡野正敬氏が論じた、「アメリカ・ファースト」の構造的定着を前提とした日本の安全保障戦略の総点検を紹介します。
日米関税合意の脆弱性、ウクライナ戦争が示すドローン主導の消耗戦リスク、北朝鮮のドローン実戦経験の危険性、WTO の機能不全と経済安全保障推進法の位置づけなどが整理されています。エピソードでは、多層的パートナーシップの構築、ウクライナの Brave1 モデルに学ぶ調達・実験サイクルの必要性、財政制約下での優先順位設定と国民への説明責任、デュアルユース技術の市場拡大、グローバルサウス外交の重要性についても議論しています。
Foreign Affairs の「China's AI Arsenal — The PLA's Tech Strategy Is Working」をもとに、中国人民解放軍の調達要求を数千件分析し、AI の軍事統合が無人機やサイバーだけでなく意思決定支援や認知戦にまで広がっていることを示したジョージタウン大学の研究を紹介します。
経験不足の将校団を AI で補うことの誤算リスク、偽情報による AI 判断の撹乱と意図せぬエスカレーションの危険性、米中が反復改良のサイクルを競い合う構図が指摘されています。エピソードでは、米国の調達改革や Anthropic との交渉失敗の背景、軍事 AI に必要な秘匿データの制約、マルチベンダー設計の重要性、そして日本における防衛転用ルールの整備やディープフェイク検知のビジネス機会についても議論しています。
ITIF の「Internal Value Chains Remain Dependent on China Even as Multinationals Shift Production to America」をもとに、台湾 Inventec、日本レゾナック、韓国 LS Cable & System の3社を事例に、「チャイナ・プラスワン」が地理的分散は進めても依存の中身を減らさないことを示した報告書を紹介します。
中国が誘因と強制でノウハウ・人材・知財を国内に留める構造、対内投資の成功基準を雇用やCAPEXではなく工程の移転度で測るべきという提案、二次依存(同盟国企業経由の間接的依存)の問題が指摘されています。エピソードでは、少数持分取得まで踏み込んだ攻勢策の是非、チャイナ・プラスワンの歴史的経緯、標準・認証のロックイン問題、そしてレゾナックの「研究は進めるが製造は動かさない」戦略の含意についても議論しています。
RUSI の「Middle Powers Must Win the AI Deployment Race」をもとに、中堅国がAIのモデル開発競争ではなく導入(デプロイメント)競争で勝つための英加パートナーシップの 5 本柱を紹介します。
防衛 AI 導入加速機構の設立、共同調達・標準・検証、共同テスト・評価、運用テストベッドとウォーゲーム、人材循環という 5 つの柱が記事では紹介されています。エピソードでは、過去に PEP Think でも取り上げた ECFRのCapability Club 構想との比較、安全性を「ブレーキ」ではなく「線路」として位置づける発想、ハイパースケーラー依存と主権のバランス、共同調達が仕様の固定化を招くリスク、データ整備や権利処理のボトルネック、そして日本が同盟国市場を見据えて相互運用性を設計段階から組み込むことの重要性についても議論しています。
2 本目のエピソードでは、気候変動の影響が気温目標や排出量の数字ではなく、具体的な制度やビジネスの現場に現れている問題を取り上げます。人工雪への依存が冬季五輪の開催モデルを変えつつある構造変化、大排出企業を改革の側に動かすための条件、そしてインフラ整備と自然保護を同時に進める制度設計という3つの論点から、気候変動時代の新たな制度設計の潮流を考えます。
Lowy Institute の「Manufacturing Winter: The Olympic Games in a Warming World」をもとに、冬季五輪における人工雪への依存の急速な進展を紹介します。
北京大会では競技用の雪のほぼすべてが人工雪となり、ミラノ・コルティナ大会でも人工雪用の大規模な貯水地が整備されています。エピソードでは、人工雪のための水資源やエネルギー、インフラ投資の問題、温暖化による開催可能都市の減少、既存会場の再利用や開催地ローテーションの議論などを整理しながら、冬季五輪の開催制度がどのように変わりつつあるのかを議論しています。
Lowy Institute の「The Hard Part of Net Zero: Mobilising Big Emitters Behind Reforms」をもとに、米国のメタン規制を例に、石油・ガス企業の一部が規制反対から規制支持へと態度を変えた背景を紹介します。
削減技術のコスト低下、投資家や NGO などの圧力、そして産業自身の戦略的判断がどのように組み合わさって企業行動を変えるのかが整理されています。エピソードでは、脱炭素政策を実行段階に移すための条件として、規制設計と産業インセンティブの組み合わせ方について議論しています。
Niskanen Center の「We Can Build Infrastructure and Habitat at the Same Time」をもとに、道路や送電線などのインフラ整備と自然保護を制度設計によって両立させる仕組みを紹介します。
コロラド川の絶滅危惧魚類回復プログラムやミティゲーション・バンキングなどの具体的な制度が取り上げられています。エピソードでは、許認可の遅延や制度設計の摩擦がインフラ整備と保全の双方を遅らせている問題、そして開発と保全を同時に進めるための制度的条件について議論しています。