海外シンクタンクの議論を日本語で読み解き、日本のビジネスや政策への含意を考えるポッドキャストシリーズ 「PEP Think」。
今回は、「脱炭素政策を分ける 『時間資源』の使い方 」と「分散が安全を保障する、とは限らない 」という2つのテーマから、国家能力・システム設計・資本配分の問題としての気候政策と、分散外交・エネルギー安保・ガス危機対応に共通する構造転換の条件を考える2本のエピソードをお届けします。
1 本目のエピソードでは、脱炭素を太陽光や EV のような技術の話や環境意識の話としてではなく、「時間」という資源の使い方の観点から見直します。国家が数十年単位で計画を続けられるか、部門ごとにずれた計画をどう同期させるか、長い時間をかけて回収する投資を誰が支えるのかという3つの論点から、中国と米国の気候政策の比較、英国の AI を用いたネットゼロ計画、気候投資の設計を通じて、脱炭素を国家能力・システム設計・資本配分の問題として捉え直します。
Council on Foreign Relations の「China Is Planning Decades Ahead on Clean Energy. The U.S. Has Other Priorities.」をもとに、中国がソーラー・EV・水素・核融合までを長期計画の中に位置づける一方、米国は政権交代で政策が揺れ産業競争力や気候適応、国際主導権まで失うリスクがあるという論点を紹介します。
エピソードでは、脱炭素を排出削減だけではなく、製造業・電力インフラ・防災・通商・外交を束ねる長期の国家戦略競争として捉え直し、日本でも GX を安全保障や産業政策として見る必要があることについて議論しています。
Tony Blair Institute for Global Change の「AI for Climate: Redesigning the UK's Net-Zero Planning」をもとに、英国のネットゼロ移行が停滞する原因を技術不足ではなく、電力・交通・土地利用・住宅・レジリエンスなどが部門ごとにずれた計画システムとして動いていることに見いだす議論を紹介します。
エピソードでは、AI を単なる効率化ツールではなく、需要ピークや系統制約を先回りして捉え、共有データと統合モデルで全体計画を更新し続ける基盤として使う発想、そして責任主体や制度設計の重要性についても議論しています。
Bruegel のワーキングペーパー「Investing for tomorrow: long-term investment, economic scale and the green transition」をもとに、気候投資が進まない理由を無関心の問題ではなく、短期の資金と小さすぎる意思決定単位の問題として捉える議論を紹介します。
エピソードでは、長期投資家ほどグリーン資産を持ちやすいこと、大きな経済圏ほど投資の便益を回収しやすいこと、そして気候クラブのような大きな協調単位が長期投資を後押ししうることについても議論しています。
2 本目のエピソードでは、分散させておけば安心という考え方に、インドネシアの分散外交、化石燃料輸入国を縛るチョークポイント、欧州のガス危機対応という3つの論点から疑問を投げかけます。分散はリスクを減らす第一歩ではあっても終点ではなく、それを支える制度・規制・予算があるか、価格ショックに耐えられる構造へ移れているか、最終的に輸入に頼らなくてもいい自立に近づけているかが問われます。分散の先にある本当の自立をどう作るのかという構造転換の条件を考えます。
Lowy Institute の「As Prabowo arrives in Tokyo, Japan and Indonesia are building faster than they are thinking」をもとに、日本が長年の支援国であるにもかかわらず、インドネシアが訪日を交渉カードとして使いフリゲート・原子炉技術・三国間の安全保障協力、さらには韓国との戦闘機交渉まで同時に進めている構図を紹介します。
複数国を競わせる非同盟外交には合理性がある一方で、それを支える制度・規制・予算・国内説明が追いついていないことが整理されています。エピソードでは、パートナーを集めることと管理することは違うという点についても議論しています。
E3G のレポート「Beyond Securing Supply: Chokepoint risk for oil and gas importers」をもとに、ホルムズ海峡危機のなかで、供給量の確保を強めても石油・LNG 輸入国はチョークポイントや紙のボトルネックから逃れられないという論点を紹介します。
供給先の多角化は重要でもそれだけでは構造的な脆弱性は残ることが整理されています。エピソードでは、太陽光パネルや蓄電池は一度導入すれば将来の燃料輸入を減らせること、そしてエネルギー安全保障の指標を供給確保から依存低下へ切り替える必要性についても議論しています。
Bruegel の「How Europe should respond to the Iran gas shock – and how it shouldn't」をもとに、EU は直ちにガス不足になるわけではないものの価格ショックと冬季調達競争に対して非常に脆弱であり、危機対応の中心は価格抑制ではなくガス需要の削減に置くべきだという論点を紹介します。
供給安全保障と価格安全保障を分けて考える視点、ガス価格の上限設定や一律補助が依存を延命させることが整理されています。エピソードでは、ヒートポンプ・電化・再エネ・ターゲット型支援、そして EU・日本・韓国の需要削減協調が次の危機に備える鍵になることについても議論しています。