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今週の PEP Think: 「日本すごい」の正体は、実は地味な制度と足腰?

作成者: PEP 事務局|2026/5/8 (金)

海外シンクタンクの議論を日本語で読み解き、日本のビジネスや政策への含意を考えるポッドキャストシリーズ 「PEP Think」
今回は、「『日本すごい』の正体は、実は地味な制度と足腰?」をテーマに、日本の鉄道・カナダの高速鉄道計画・日本の造船をそれぞれ取り上げた3本の記事を通じて、日本の強みの作り方とその直し方を考えるエピソードをお届けします。

「日本すごい」の正体は、実は地味な制度と足腰? ― 鉄道・新幹線・造船から考える

今回のエピソードでは、「日本すごい」と一言で済ませてしまうとその強みを支えている地味な仕組みが見えなくなってしまうという問題意識から、日本の鉄道・カナダの高速鉄道計画・日本の造船という3つの論点を通じて、日本の強みを文化や国民性ではなく制度の組み合わせとして読み解き、その作り方と直し方を考えます。

日本の鉄道はなぜ強いのか ― 文化ではなく制度の組み合わせ(Works in Progress)

Works in Progress の「The secrets of the Shinkansen」をもとに、日本の鉄道の強さを定時運行や国民性ではなく、街づくり事業としての鉄道経営とそれを支える制度の束として読み解く視点を紹介します。

駅周辺の不動産や商業・生活サービスを展開できるようにする沿線開発モデル、住居系地域でも一定の店舗や学校・病院が共存できる比較的リベラルな用途地域制度、車庫証明のように駐車コストを利用者に負担させる駐車政策、そして運賃上限規制や公共目的に絞った資本補助と組み合わせた JR の民営化が整理されています。エピソードでは、こうした制度の組み合わせが日本の鉄道の高い利用率を支えていること、一方で地方の公共交通や民営化以外の側面、文化論を完全に否定しすぎることのリスクについても議論しています。

新幹線はカナダに移植できるか ― 成功例の輸入リスク(Macdonald-Laurier Institute)

Macdonald-Laurier Institute の「Why the Toronto-Quebec high-speed rail line is a bad idea」をもとに、日本の新幹線のファンを自認する著者がカナダのトロント・ケベックシティ間の高速鉄道計画 Alto に反対する論考を紹介します。

反対の理由として、600 億から 900 億カナダドル規模、10 年以上を要する巨大事業であり地元の土地収用や地域分断への反発も強いこと、日本の成功は地理や人口密度や継続的な建設能力に支えられていてカナダにそのまま適用できないこと、メガプロジェクトは費用超過や需要見積もりの誤りが頻発するという研究知見が整理されています。エピソードでは、トロント・モントリオール間の 3 時間という距離は航空からの転換が起きやすいゾーンに入るという推進派の反論、そして日本がインフラを輸出する際には新幹線そのものではなく新幹線を成立させる条件をいかに輸出できるかが問われること、機会費用として航空インフラや都市内交通との比較ポートフォリオで考える必要性についても議論しています。

日本の造船再生の現実的な勝ち筋 ― 中国に勝つのではなく、同盟の整備基盤に(Lowy Institute)

Lowy Institute の「Japan aims for a shipbuilding revival」をもとに、日本の造船業の再生を世界一の商業シェアを取り戻す産業政策ではなく、米海軍の稼働率やインド太平洋の同盟運用、海上輸送の経済安全保障を支える後方能力として読み解く視点を紹介します。

日本の防衛物量の 99.6% を海上輸送が担うこと、米海軍が整備待ちや調達遅延を抱え最大 3 年の遅れも指摘されていること、日本の造船再生計画においては 3500 億円の政府基金と 1 兆円規模の官民投資フレームが分けて示されていることが整理されています。エピソードでは、量で中国に対抗するのではなく稼働率の引き上げや高品質・脱炭素船・同盟向けの標準を握る方向に活路があること、造船再生の目標を世界シェアの回復・国内海上輸送の安全保障・同盟国の整備支援という三つの KPI に分けて管理する必要性、そして米艦の整備受け入れは仕事の受注ではなく契約や機密管理、部品認証を含む標準化プロジェクトとして見る必要性がある、という視点についても議論しています。