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今週の PEP Think: 「メタサイエンスで研究制度を検証する」「Abundance とは何か」

海外シンクタンクの議論を日本語で読み解き、日本のビジネスや政策への含意を考えるポッドキャストシリーズ 「PEP Think」
今回は2本のエピソードをお届けします。1本目「メタサイエンスで研究制度を検証する」では、研究を支える仕組みそのものを検証する方法を考えます。2本目「Abundance とは何か」では、米国で広がる供給制約をめぐる議論を整理します。

メタサイエンスで研究制度を検証する ― 助成制度・チーム型研究・ムーンショット

研究開発の成果は、研究テーマや予算規模だけで決まるものではありません。誰に資金を配るのか、どのようなチームを組むのか、誰が判断し、進捗をどのように測るのか。こうした科学の営みそのものを研究対象とし、データや実験を通じてよりよい仕組みを探る研究と実践が、メタサイエンスです。

1 本目のエピソードでは、研究助成の仕組みを継続的に検証する専任部門、目標志向のチーム型研究を支える米国の X-Labs、ムーンショット型研究開発の設計を扱う3本の記事を紹介します。制度を新しくするだけでは、その効果を十分に判断できません。どのようなデータを集め、何と比較し、その結果を次の意思決定にどう反映するのか。研究を支える仕組みそのものからエビデンスを生み、制度設計や評価方法の改善につなげるための論点を議論します。

メタサイエンス ― 助成制度そのものをどう検証するか(Macroscience)

Macroscience の「Science Agencies Need Metascience Units」をもとに、研究助成機関の内部にメタサイエンス部門を置き、資金配分や審査の仕組みを継続的に検証する構想を紹介します。記事は、不採択申請を含む行政データを整備し、迅速助成、多段階審査、研究者個人への助成などを従来方式と比較する実験を提案します。

エピソードでは、審査期間や職員負担が改善しても、採択された研究の長期的な成果まで改善したとは限らない点を確認しました。また、制度の効果が研究分野や研究者によって異なる可能性や、審査の一致度と、将来の研究価値を捉える妥当性とを区別する必要性について議論しています。さらに、実験計画の事前登録、不採択案件を含む長期追跡、得られたエビデンスを予算や制度変更の意思決定に結び付ける体制、日本で同様の仕組みを設ける場合の組織設計についても考えました。

X-Labs ― チーム型研究への公的資金と説明責任(Federation of American Scientists)

Federation of American Scientists の「Scaling Team Science is the Important Experiment We Need」をもとに、米国立科学財団の X-Labs を紹介します。X-Labs は、目標志向のチーム型研究に資金を配る新しい制度です。記事は、Focused Research Organizations(FRO)などの先行モデルや制度的背景を紹介しながら、その可能性と課題を論じています。

エピソードでは、FRO が論文以外にも装置、データ、ソフトウェア、研究手法などを生み出してきた一方、それらの成果が組織形態そのものによって生まれたのかは十分に検証されていない点を議論しました。X-Labs についても、適切な課題やチームの選定、大学やほかの研究活動への機会費用、知的財産と外部利用、柔軟な契約と費用管理、組織終了後の成果の普及などを検討しています。また、小規模なチームと大規模なチームには異なる役割があり、チームを大きくすれば成果が増えるとは限らないことや、X-Labs 自体を比較評価を伴う制度実験として捉える必要性についても考えました。

ムーンショット型研究開発 ― 目標・組織・評価をどう設計するか(Federation of American Scientists)

Federation of American Scientists の「The Science of Moonshots: Using Evidence to Design Transformative Initiatives」をもとに、ムーンショット型の大型研究開発をどのように設計するかを紹介します。記事は、ヒトゲノム計画とヒューマン・ブレイン・プロジェクトなどを手がかりに、明確な目標に加えて、そこへ至る技術的な道筋、組織構造、ガバナンス、途中で計画を見直す仕組みの重要性を論じます。さらに、どの分野が大型投資に適しているかを見極め、事業開始後も進捗を検証するために、メタサイエンスを組み込むことを提案します。

エピソードでは、将来の有望分野を事前に予測するためのエビデンスと、事業開始後に計画を改善するためのエビデンスを区別しました。過去の研究データからブレークスルーの候補を予測する方法には、まだ不確実性があります。一方で、進捗を測り、技術課題を分解し、必要に応じて目標や資源配分を変更する仕組みには一定の意義があります。また、研究の初期段階と大規模な技術統合の段階では適切なチーム構成が異なる可能性があることや、研究成果を社会で利用する段階まで含めて権限、予算、情報、評価をどう配置するかについても議論しています。

Abundance とは何か ― 「作れなさ」という共通の問題

住宅、クリーンエネルギー、医療・保育、公共インフラなど、必要性が認識されていても、十分な供給につながらない分野があります。2 本目のエピソードでは、米国の政策論争で広がるアバンダンスを取り上げます。住宅不足やエネルギーインフラの遅れ、行政の実装能力などを「作れなさ」という共通の問題として捉え、供給を妨げる制約をどう取り除くかを考える議論です。

アバンダンスは、YIMBY 運動、Niskanen Center の「コスト病社会主義」、供給側進歩主義、国家能力論など、2010年代以降の複数の議論を背景に形成されました。エピソードでは、従来の需要側の支援や一律の規制緩和との違いを整理したうえで、三つの論争を取り上げます。許認可の迅速化と環境保護・住民参加、供給拡大と利益の分配、成長都市への移動と衰退地域の維持という論点を通じて、何を増やし、誰に届けるのかを検討します。

さらに、米国でアバンダンスが政策や立法に取り入れられ始めた状況と、制度改革だけでは実際の供給増加につながらない可能性を扱います。日本については、労働力不足、コストプッシュ型のインフレ、地域の生活維持サービス、行政のデジタル化、経済安全保障を踏まえ、「供給力」の再構築という観点から議論します。供給量、処理速度、価格、サービスへのアクセスといったアウトカムを測り、政策を実際の成果につなげる能力も重要な論点です。