2021年10月5日(火)、一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)が開催した「PEPサミット2021~扉をひらこう」の開会挨拶及びOpening Sessionの動画・レポートです。
船橋洋一 一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(API) 理事長
開会挨拶で船橋理事長は、開催前日に首班指名が行われて時代の転換点に立つ中で、社会の現場から政策起業の扉を開いた方による政策起業の可能性を議論する場としてPEP Summit 2021を開催したと語りました。
昨年取り組んだコロナ民間臨調での取組を紹介し、泥縄対応に対する警告を鳴らしたにもかかわらず泥縄を繰り返した一連の政府の対応を振り返った上で、政策起業力における調査・検証の重要性を提示しました。また国民が主体となって取り組む必要のあったコロナ危機を前にして、政策形成で媒介役を担う政策起業家の役割が重要になっていると指摘しました。
また各セッションのポイントを順に紹介した上で、「議論の中からサムシングを掴み、政策起業の扉を開けて頂ければ」との言葉で締め括りました。
【モデレーター】
駒崎弘樹 認定NPO法人フローレンス 代表理事
- 【登壇者】
朝比奈一郎 青山社中株式会社 筆頭代表CEO
桑原祐 マッキンゼーアンドカンパニー シニアパートナー
小林りん 学校法人ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン 代表理事
須賀千鶴 経済産業省 商務情報政策局 情報経済課長
藤沢烈 一般社団法人RCF代表理事/ふくしま12市町村移住支援センター長
松尾豊 東京大学大学院工学系研究科 教授
オープニングセッションでは、まずコアメンバーが取り組んできた政策起業の事例を紹介。それらの取り組みを例に、政策起業家として感じている課題を提起しました。特に、今回のサミットではセッションを聴いただけで終わらないよう、各セッションから何を持って帰ってほしい、というコアメンバーの想いを視聴者に伝えました。
それぞれが持つ政策起業についての課題意識の一つに「人材」があります。須賀千鶴氏は、経済産業省から民間機関である世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター長に出向していた経験を振り返り、リボルビングドアで官へと帰ってきた側の人材として、霞が関の文化変革やデジタル庁などの支援に取り組みたいと述べました。松尾豊氏は技術を活用して社会変革を起こすために必要なのは、技術と社会を繋ぐ人材であり、その人材育成やスキルの明確化が必要だ、との課題を提起しました。
桑原祐氏も国家公務員出身のコンサルタントの立場から、官民双方でそれぞれ求められる人材像の策定を課題としており、そこの明確化がリボルビングドア実現のカギだと言います。また、民間セクターでの失敗と成功のサイクルを基に、官へアドバイスを与えるということ。また政府の過去の苦労から何を学べるかを、なるだけ早くサイクルを回しながら学んでいくことが肝要だと述べました。
藤沢烈氏も東北・福島の復興事業の経験から、政策を実行・実現する人材にもっと焦点をおいていくべきだと提起しました。莫大な国家予算を現場の制度として責任をもって実現・実行し、現場の実情を理解した人材に今後の復興政策を担ってもらう必要があるという課題を挙げました。
朝比奈さんは「本当に日本は変わるのかなという」という懐疑心について言及しつつ、リーダーシップや自立心を持った政策人材を作り出していくフレームワークについて提言しました。
コアメンバーが触れた各セッションから持ち帰ってほしい事柄は以下の通りです。
・政策を実際に実現まで持っていける人材が必要であるというポイント
・未だに弱い日本のPDCAサイクルとその問題点
・本業のビジネスとは全く別のアプローチで社会課題を解決していくあり方
・政策起業家になるための実際の第一ステップとは何か
・リボルビングドアのための官との関わりあい方、政府のアジェンダリストともいえる『骨太の方針』への関与の仕方、等が挙げられました。
示唆に富んだ議論に魅了されるだけでなく、そこから政策起業への第一歩を踏み出すためのノウハウを持ち帰ってほしいと駒崎弘樹氏は語りかけました。政策起業家は登壇者や特定の人だけを指すものではなく、誰もが政策起業家になれる社会を目指して、視聴者とともに考えていきたい、と締め括りました。