英国の公共部門は毎年何十億ポンドもの資金を投じて商品やサービスを購入しています。過去には、公共調達は最も低いコストの入札者に契約を与えることで「費用対効果」を追求していました。しかし、2013年の社会価値法 (Social Value Act) の導入以来、政策立案者は公共支出がより戦略的に使用され、環境や地域経済に広範な影響を与えることを期待しています。したがって、公共機関は価格だけを気にするのではなく、「持続可能な調達」を通じて「トリプルボトムライン」(人、地球、価格)のバランスを取りながら、支出によって達成できる更なる影響を考慮する必要があります。
通常、こうした選択は調達チームの責任と考えられています。しかし、NestaのInfuseプログラムでの研究により、持続可能な調達は調達専門家だけでは達成できないことが明らかになりました。Infuseは、カーディフ首都圏全体で革新的な公共サービスのスキルと能力を構築し、野心的な変革を創出するためのイノベーションプログラムです。
プログラムの一環として、私たちは調達チームと関わり、多くの調達専門家がより持続可能なアプローチに賛同している一方で、それが効果的に機能するためには組織全体の賛同が必要であることを学びました。組織の全員がこのアジェンダを理解し、どの部分を支援できるかを認識する必要があります。
では、公共部門が商品やサービスを調達する方法をどのように変えることができるでしょうか?成功の鍵は計画と準備にあります。時間を確保して市場と関わり、既に存在しているものについて理解し、地域経済や環境に利益をもたらす機会を探りテストすることが重要です。
採用とサプライチェーンの手続きを少し調整することで、組織は地域の人々に良い雇用機会を提供し、通勤時間を短縮し、地域社会との強い絆を作ることで、社会的価値を向上させることができます。さらに、組織内や組織間で購入するものを戦略的に結びつけることで、大きな共有利益を実現し、地域の経済成長を向上させることができます。
これらの変革には時間と資源が必要であり、調達専門家だけでは実現できません。したがって、持続可能な調達には、公共部門全体のあらゆるスキルや知識を活用し、公共支出の効果を最大化する協働的なアプローチが必要です。
例えば、我々はInfuseの一環として経済開発チームと協力してきました。彼らは、多くの地元企業が過去に公共機関との入札で悪い経験をし、入札プロセスから離れてしまったことに気付きました。経済開発チームは現在、調達チームと協力し、関係を再構築して地元企業が市の契約にアクセスできるよう支援・奨励するイベントを計画しています。
しかし、この議題は経済発展だけに限られたものではありません。コミュニティと協力する人々は誰でも、コミュニティが優先的に希望する事項に(訳注:社会価値法が規程する)社会的価値条項が沿ったものであり、建設プロジェクトがコミュニティの支持を得られるようなものとなるよう働きかける余地があるでしょう。雇用・技能チームは、疎外されたグループが建設プロジェクトに参加する機会を見つけ、入札に含めるべき技能や訓練を明らかにし、落札した請負業者と協力して地元の人々が雇用機会を利用できるようにすることができます。
環境と持続可能性の担当者も、購入する製品、材料、ソリューションとして持続可能なものを特定し、入札に含まれる可能性のある脱炭素対策の種類を検討し、モニタリングすることもできます。つまり、付加価値を生み出すチャンスはどこにでもあり、自身が果たせる役割について誰もが検討すべきである、ということです。
覚えておくべき重要なことは、何を買うかだけでなく、どのように買うかを考えたときに、最大のインパクトが生まれるということです。これは誰もができることであり、早期の関与と関係構築によって全てが決まります。市場を探検しなければ、どのような種類の商品、製品、サービスが利用可能かを知ることはできません。社会・環境に配慮した財・サービスで市場において現実的に達成可能なものにはどのような種類があるのか知るためには、商品の提供者と話して何が可能かを理解する以外にありません。
調達において外部に与える更なる影響が特定されたら、それらの追加基準をモニタリングし、それらの条件が満たされていることを確認する責任が誰にあるかも考慮する必要があります。モニタリングは既存の役職でできることなのか、それとも組織内の別の専門知識を持つ担当者を入れる必要があるのかを判断する必要があります。例えば、排出量を削減する措置を導入した場合、削減の基準値はすでに存在するかもしれませんし、環境専門家の助けを借りて環境への影響を示す必要があるかもしれません。追加の徒弟制度や職業訓練の実施を求める場合、その報告はどのように行われるのか、また基準が満たされていない場合はどうなるのかを検討する必要があります。
モニタリングは、多くの持続可能な調達実践が挫折する領域です。実施状況を監視する方法がなければ、世界最高峰の準備であっても何の役にも立たないからです。
したがって、付加価値を高める手段として、品目や入札仕様書以外の要素を考えることが非常に重要になります。早期に市場に関与し、可能性を探るための関係を構築することで、更に大きな影響をもたらすことができるようになります。こうした影響を測定し、付加価値が達成されていることを確認するためのリソースを確保することが重要です。これらは誰もが果たせる役割であり、持続可能な調達実践を確保する責任は調達チームだけにあるわけではありません。
この取り組みが効果的に採用されれば、公共部門は真の「価値」を実現するための道を切り開くことができ、民間部門がそれに続けば、環境、人、場所に対する影響は非常に大きなものになるでしょう。