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自由で開かれた社会において、
市民が公共の事柄に関心を持ち、
それに参画するには、
確かな情報を伝え、判断材料を提供し、またアジェンダを形成する
ジャーナリズムの力が決定的に重要である。
経済も社会も教育も生活も、
そして行政も
デジタル・トランスフォーメーションが進む中、
声高な時勢に呑み込まれず、
アルゴリズムの専制を許さず、
フェイクをはじき返し、
当事者への綿密な取材に基づき、的確なデータを踏まえて調査、報道を行い、
多角的な視点を提供する
ジャーナリズムの力がこれまで以上に求められている。
インターネット空間の力強いジャーナリズムが、
多様にして包容力と活力のある自由主義と
民主主義を育てる上で重要な役割を果たす。
自由で開かれた社会において、市民が公共の事柄に関心を持ち、それに参画するには、
確かな情報を伝え、判断材料を提供し、またアジェンダを形成するジャーナリズムの力が
決定的に重要である。
経済も社会も教育も生活も、そして行政もデジタル・トランスフォーメーションが進む中、
声高な時勢に呑み込まれず、アルゴリズムの
専制を許さず、フェイクをはじき返し、
当事者への綿密な取材に基づき、
的確なデータを踏まえて調査、報道を行い、
多角的な視点を提供するジャーナリズムの力がこれまで以上に求められている。
インターネット空間の力強い
ジャーナリズムが、
多様にして包容力と活力のある自由主義と
民主主義を育てる上で重要な役割を果たす。
市民が公共に参画する上で欠かせない政策起業力を発揮するために、メディアの力は決定的に重要です。多角的な視点を提供するジャーナリズムを、特に次世代を担うインターネット・メディアという場所で応援していきたい。そのような想いから「PEPジャーナリズム大賞」を創設しました。初年度は、73件もの作品をご応募頂き、6月1日に選考委員会を開催致しました。厳正な選考の結果、大賞、現場部門、オピニオン部門に加えて、特別賞2件の5名の受賞者の方々を決定しました。多くのご応募を頂きましたこと、御礼申し上げます。現場を歩き、多くの声を掬い上げ、研究し、そして鋭い考察を様々な手段で発信する。応募作品を通じて、そのような力強いジャーナリズムの担い手が多くいらっしゃることに勇気をもらいました。今後も私どもの財団のミッションである自由主義、そして政策起業力の探求のため、インターネット上でのジャーナリズムを担う方々を応援して参ります。最後に、本賞は政策起業家プラットフォームPEP*プロジェクトの一環として運営しております。PEPにご支援を頂いておりますスポンサーの皆様に感謝申し上げます。
* 本賞は、一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブが2019年10月に立ち上げた政策起業力のプロジェクト「PEP」(政策起業家プラットフォーム:Policy Entrepreneur’s Platform)が母体となっております。PEPは、公のための課題意識のもと、専門性・現場知・新しい視点を持って課題の政策アジェンダ化に尽力し、その政策の実装に影響力を与える「政策起業家」を支援し、公共政策のプロセスへの国民一人一人の参画を促し、より政策本位の政治熟議を生み出すことを目指すプラットフォームです。
PEPジャーナリズム大賞は、インターネット空間において、多様にして包容力と活力のある自由主義と民主主義を育てるジャーナリズムの醸成を目的として創設されました。今年ははじめての試みで、しかもコロナ禍という行動を制限された環境でしたが、応募作はいずれもジャーナリズムの高みを競う力作揃いでした。ファイナリストも含め、選ばれた受賞作は、私たちが知っているつもりになっていたことを問いただし、日常の風景を見直し、社会変革を駆動するきっかけをつくってくれる、まさに創設の趣旨を反映する作品です。選考委員会は、PEPジャーナリズム大賞を通して、社会に新たな風を呼び込む高い能力をもったジャーナリストたちの作品を広く世の中に知ってもらうとともに、ジャーナリズムの力、およびその未来のあり方を考えていきたいと思います。受賞されたみなさん、おめでとうございます。そして応募してくださったみなさん、ありがとうございました。
自由主義と民主主義に活力を与えるジャーナリズムの力を示した報道。
光の当たりにくい社会課題を取り上げ、政治や行政、世論にインパクトを与えた(あるいは将来的に与えうる)報道。
無国籍児は、子どもであるため声をあげにくい(あるいは無国籍であることに気付いていない)だけでなく、無国籍であることで人権が制約されていたり、生活苦を抱えたりするなど、二重・三重に苦しい立場に立たされている。本記事は、このような日本における無国籍児問題を丹念に取材し、事実を冷静に提示することを通じて問題の本質を明らかにし、読者の胸に強く訴えかける。 とりわけ、多様性の必要が叫ばれる日本社会において、今後、いかに外国籍の人たちや国籍を持たない人たちを包摂していくのかという問題提起をし、日本社会のあり方へ一石を投じる内容となっている。「光の当たりにくい社会課題を取り上げ、政治や行政、世論にインパクトを与えた報道」という現場部門賞の趣旨に合致していると判断した。
時勢に流されず確固たる視点で冷静・鋭い視点を提供した論考・論説、コラム。
昨今ネットメディアを中心に、妊娠・出産・育児・不妊治療・子どもを持たない生き方などについて多くの報道が見られる。他方で、それらの問題の中でも、流産は既存の言説の多くが悲しさを示しており、どこかタブーで、一般的にも暗い印象を持たれがちだ。また、当事者発信も多くない。そうした中で、本記事は、とくに不妊治療中の流産について、もう少し気楽に話し、受け止める雰囲気があってもよいのではないかと、当事者の視線から従来とは異なったトーンで取り上げている。本記事では、流産のステレオタイプ的な悲しさ像とは違った声を出し、それによって不妊治療のイメージにも一石を投じていると見てとれる。主流メディアではあまり触れられない、センシティブな流産という話題を新たな角度で発信した点を評価した。
女性の労働参加が一般的となり、コロナ禍での学校の一斉休校や保育園の臨時休園が相次ぎ、ベビーシッターの需要が増える中で起こった事件。本報道は、これをいち早く報じた。また、いわゆる「シェアリング・エコノミー」という業態の無責任さの追及、ネット社会におけるプラットフォーマーや口コミ・レビューのずさんなあり方、育児支援政策の理想と現実、政府がお墨付きを与えた事業者の社会的責任など、様々な論点に示唆を与えた。本報道は、最終的に関連政策実現の後押しもした。当事者の証言や様々な情報を遠隔地でも収集する取材方法、および複数媒体で発信して注目度を上げていく手法も含め、新たな調査報道のあり方も提起していることから、特別賞とした。
受賞ページへこれまでも政府の杜撰な公文書管理は度々報じられてきたが、本記事は検察や裁判所での裁判記録の廃棄という、あってはならない深刻な問題を取り上げている。検察・裁判所は司法の一角を担う機関であり、人権や民主主義と密接に関わっているが、そうした機関において、違憲訴訟を含む訴訟資料が廃棄されていたことをこの報道は暴いた。その意義は重大で、日本の民主主義を考える上で、衝撃的である。現場に密着して資料廃棄の実情を明らかにした本記事を、特別賞とした。
受賞ページへ※オピニオン部門・特別賞は該当者がありませんでした。
林香里 (委員長)
東京大学大学院
情報学環教授
治部れんげ
ジャーナリスト
竹中治堅
政策研究大学院大学
教授
西田亮介
東京工業大学リベラルアーツ研究教育院
准教授
山脇岳志
スマートニュース
メディア研究所
研究主幹
船橋洋一
一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長
PEP ジャーナリズム大賞を含むPEPの活動は以下の方々に協賛をいただいております。
APIは、2017年7月に前身である一般財団法人日本再建イニシアティブ(RJIF)を発展的に改組して発足しました。アジア太平洋の平和と繁栄を追求し、この地域に自由で開かれた国際秩序を構築するビジョンを描くことを目的とするフォーラムであり、シンクタンクです。創設以来一貫して、日本の直面する戦略とガバナンスの課題を探求し、各種の政策提言活動を行っています。
法人名:一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ
所在地:〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目23番1号 アークヒルズ フロントタワーRoP 11階
代表者:理事長 船橋洋一
設立:2011年9月
URL:https://apinitiative.org/
問い合わせ先:政策起業家プラットフォーム 事務局
選考委員コメント
本記事は、人々が集団で正義を振り回すことによる負の側面を、人間の内面的な心理分析にまで踏み込んで報じており、読みながら考えさせられる内容となっている。 一般市民がコロナ禍での自粛をめぐって「私的警察化」する有様は、全体主義下の秘密警察が採用した相互監視・密告制度にも通じる。記事では、コロナ禍という例外状態で、だれもが不安に陥ることによって「自粛警察」になり得るという身近でミクロな心情と、そのような心情が集合的に沸騰することによって自由主義の縮小および民主主義の後退が余儀なくされるというマクロな視点とが架橋されている。「けしからん」という正義心が行き過ぎることによって、相手に及ぼす犠牲や危害を見失ってしまう偽善と高慢が行き着く先、さらにそうした人間心理を利用する政治の存在など、新型コロナウイルス感染拡大の過程における「もう一つの危機」を明らかにした。本記事は身近な視点から大きな社会を照射し、「自由主義と民主主義に活力を与えるジャーナリズムの力を示した報道」に相応しいと判断した。