• 中川七海

    シリーズ「公害『PFOA』」

選考委員コメント

「課題発見部門」賞の「シリーズ 公害『PFOA』」は、国際的に規制が進む有機フッ素化合物(PFOA)による高濃度土壌汚染について、中川七海氏が様々な視点から丹念に調査した一連の報道である。
PFOAは国際的には強度の有毒性がある危険な化学物質として知られており、映画にもなった。
しかし、日本ではほとんど知られておらず、主要メディアも大きく取り上げてこなかった。
今回対象となった記事では、専門家の調査結果とともに、PFOAを使用している企業の担当者ならびに地方自治体担当者への取材インタビューをし、さらに情報公開請求などでより詳しい情報を入手しながら、高濃度土壌汚染が放置されている状況について詳述している。
環境省、自治体、そして企業の責任を問う姿勢は、ジャーナリズムの古典的機能である権力監視を着実に実践しており、審査員全員が調査報道として高く評価し、今年度の「PEPジャーナリズム大賞」とした。

受賞者コメント

本作を高く評価いただき、誇りに思います。
受賞にあたり、私が所属する報道機関Tansaの寄付者と、本作の舞台である大阪・摂津の皆様に御礼申し上げます。
Tansaは非営利独立メディアです。購読料や企業からの広告費は一切とらず、市民の寄付で成り立っています。本取材は、寄付により実現しました。また独立性の強さは、本作の重要な鍵でもあります。ダイキンを追及する主要メディアはおらず、今もダイキンのCMを流し続けています。
「ダイキン城下町」の摂津では、取材への協力は容易くありません。それでも「子どもの健康に関わることや」と立ち上がる住民の姿を受け、報道の自由を貫く覚悟が私に生まれました。受賞を自信に変え、引き続き取材に励みます。

  • 中川七海(なかがわ ななみ)

    1992年、大阪生まれ。大学卒業後、米国に本部を構える世界最大の社会起業家ネットワーク「Ashoka」に就職。2020年、ジャーナリズムとデザインを学ぶため米国の大学へ進学予定だったが、入学を辞退。取材の深さと哲学に共鳴し、探査報道(調査報道)に特化した非営利独立メディア「Tokyo Investigative Newsroom Tansa」で記者になることを選んだ。原発事故下の精神科病院で起きた事件の検証報道「双葉病院 置き去り事件」や、空調大手・ダイキン工業による大阪での公害を描いた「公害PFOA」などを手がける。​​

選考委員

運営団体

PEP
政策起業家プラットフォーム(PEP) 事務局

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問い合わせ先:政策起業家プラットフォーム 事務局