2019年9月9日、一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)・東京大学公共政策大学院(GraSPP)共催 「政策起業力シンポジウム2019」の第2部 分科会A「変わる霞が関とパブリックキャリアー『民官人』による令和時代の政策起業の姿ー」の録画映像と、議論のポイント要約です。
モデレーター
田中秀明 明治大学公共政策大学院 教授
登壇者
石山アンジュ (一社)Public Meets Innovation 代表理事
塩崎彰久 長島・大野・常松法律事務所 パートナー・弁護士
堀本善雄 金融庁 総合政策局 審議官
※登壇者の所属・肩書は講演当時(2019年9月9日)のものです。
個別分科会Aでは、官・民それぞれの立場から、ならびに「回転ドア(リボルビングドア)」型のキャリア(リボルバー)を経てその双方を経験して登壇者の視点から、日本の政策形成過程・官民協働による政策のオープン・イノベーションの実現に向けた課題を、特に「人材・キャリア」という焦点を踏まえて議論しました。
堀本善雄 金融庁 総合政策局審議官は、財務省・金融庁から民間転職を経て、再度金融庁幹部として出戻ったご自身の「リボルバー」としてのキャリアを振り返り、霞が関の各官庁での多様な政策人材活用の課題と展望をお話されました。
民間人材登用で障壁となるのは、カルチャーの差、官庁の人材マネジメント・評価制度等であるとし、一方で行政官が今後社会を変えていく上で、各省・官民の縦割りを超えた横のつながりが重要であり、自身もそうした公務員・政策人材の多様化に貢献していきたい、との抱負を語りました。
一方、塩崎彰久 長島・大野・常松法律事務所 パートナー・弁護士 及び 石山アンジュ (一社)Public Meets Innovation(PMI) 代表理事は、民間の立場から政策に携わった経験と、そこから見えてきた問題意識をお話されました。
塩崎弁護士からは弁護士として、ライドシェアを巡るベンチャー企業の支援・国土交通省との折衝につきお話されました。そうした新事業を可能とする戦略法務・規制緩和に取り組んできた中で、既存業界との関係性・人材の多様性の無さから、イノベーションに消極的な霞が関の問題を指摘されました。
また公務員制度改革にも携わったご経験から、政策の論理のみならず、政治の論理を熟知することの重要性を語られました。
石山代表理事は、民間企業の立場から、ライドシェア・民泊等のシェアリング・エコノミーを巡る政策形成の最前線に立ってきたご経験を踏まえ、陳情・個別の利益誘導ではなく、社会理念を起点とした「ロビイング2.0」という取組みを紹介されました。
そして、民間・若手のイノベーターらが、「(政策立案者)共に政策を考える場をつくる」「民間から政策に対して声を届ける機会をつくる」重要性を強調されました。
全登壇者の共通の問題意識たる「リボルビングドア」・「政策人材の流動性」については、米国ホワイトハウス・フェロー制度のように、若いうちから官民を超えたキャリアを築くチャンスを社会の中で設計し、政策過程に「参画」する機会を作っていくことが重要であると締めくくられました。
モデレーターである田中秀明 明治大学公共政策大学院 教授は、各登壇者による官民双方からの政策の関わりに関する話を踏まえ、「この潮流は戦後70年の政治・行政・社会を変えうるし、成功体験の中で変えていかなければならない」と強調されました。
なお、本セッションでは会場との質疑応答の時間を設けられました。会場からは政策起業を行う上での舞台・協力者設定の重要性、「リボルビングドア」と民主的正統性の問題、ホワイトハウス・フェローはじめ民間から政策過程に「参画」してことを、いかにして魅力的なものとするのか、といった質問が投げかけられました。
第1部 全体パネルディスカッション「令和時代の政策起業-政・官・民/社・学の多様なステークホルダーで考える-」はこちらから