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受賞作

受賞者スピーチ

選考委員コメント

これまでも政府の杜撰な公文書管理は度々報じられてきたが、本記事は検察や裁判所での裁判記録の廃棄という、あってはならない深刻な問題を取り上げている。検察・裁判所は司法の一角を担う機関であり、人権や民主主義と密接に関わっているが、そうした機関において、違憲訴訟を含む訴訟資料が廃棄されていたことをこの報道は暴いた。その意義は重大で、日本の民主主義を考える上で、衝撃的である。現場に密着して資料廃棄の実情を明らかにした本記事を、特別賞とした。

受賞者コメント

事件・事故など同時代のできごとの証拠や証言を整理し、文書化して束ねたのが訴訟記録です。裁判の素材となるだけでなく、それは様々な人や組織の営み、時代や世相を映し、貴重な史料になりえます。しかし従来その多くが廃棄されていました。 法曹界の誰もが知る著名な訴訟の記録、後世に引き継ぐべき重大事件の記録も、廃棄された中に含まれていました。未来の日本人にとって歴史をたどる最良の手がかりが失われつつあったのです。 この取材を始めたのは、弁護士、研究者、報道実務家の皆様との研究会での議論によって問題意識を触発されたからです。このような地味なテーマの報道を見い出してくださった選考委員の先生方とともに感謝を捧げます。

  • 奥山俊宏(おくやまとしひろ)

    1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部、特別報道部などを経て編集委員。朝日新聞社のニュースサイト『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。 著書『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)で司馬遼太郎賞(2017年度)、日本記者クラブ賞(2018年度)を受賞。近刊の共著書に『バブル経済事件の深層』(岩波新書、2019年4月)がある。