政策起業家プラットフォーム(Policy Entrepreneur's Platform、以下 PEP) は、2025 年 9 月 24 日に、政策起業家を支援する目的で PEP が開発している Web アプリケーションプロトタイプ「PEP by Tech」の解説&質問会をオンライン配信にて実施しました。
本レポートでは、その内容をダイジェストでお伝えします。実際の配信の内容も一部公開しているため、ぜひご覧ください。
PEP では、市民や民間の皆さんによる政策提言を促進・支援する活動を行ってきました。政策にかかわる人が増えることで、日本の民主主義(デモクラシー)の強化につながると信じているからです。
ただ、政策を知らないまま政策を作っても的外れなものになってしまいます。一方で、政策の素材となる要望を伝えるだけでは、そこから政策化していく政治家や官僚の皆さんの大きな負担がかかります。
従来の民間からの政策提案はいわば「生肉」を投げつけているようなもの――と表現する人もいました。
政策形成のプロセスを料理に例えるなら、要望が生肉で、できの悪い政策はおいしくない料理、と比喩的に表現できるでしょう。
従来は、官僚や政治家が生肉を受け取り、調理(具体化・制度設計)することが一般的でした。
しかし近年、民間の声を積極的に政策に反映させようという機運が高まる一方で、官僚や政治家の業務がより多忙化しつつあり、単なる素材を渡すだけでは政策実現につながりにくくなっています。
そのため、「生肉」を調理するための考え方を伝え、市民や民間と、行政や政治家との間をよりなめらかにつないでいく――こうした活動に我々 PEP は取り組んできました。
そのような思いで市民や NPO の皆様の政策提言を支援する中で、改めて痛感したのは、「政策提言の方法(生肉の調理方法)を学ぶのはやはり難しい」ということでした。
そこで注目したのが生成 AI という新しいテクノロジーです。
生成 AI を活用すれば、民間による政策提言のプロセスを補助できるのではないか――いわば生成 AI という「調理器具」を使うことで、料理の素人であっても、ある程度の「生肉」の調理がしやすくなり、さらに上達も進むのではないか、と考えました。
そして PEP では、このような生成 AI 時代の政策起業家支援のあり方を、この数カ月模索してきました。
こうした活動の一環が「PEP for GenAI」です。生成AIを使った政策調査・立案手法、具体的なプロンプトやツール活用例などを記事としてまとめ、公開しています。
もう一つが、「PEP by Tech」と題した一連の政策起業家支援ツールの提供です。これは、政策づくりのワークフローやプラクティスの見える化、あるいは生成 AI を活用した政策素案の提示など、民間による政策提言のハードルを下げる仕組みづくりを目指しています。
PEP by Tech の現行ツール一覧とその位置付けを上図に整理しました。大きな流れとしては、左から右へ「課題の分析」→「政策案の作成」→「政策案の検証」→「政策の提言」と進みます。最後に記載した「意思決定」については、主に行政・政治サイドの支援を想定しているため、左側の民間政策起業家支援のツール群とは点線で区切っています。
個別のツールの紹介や使い方については、以下の個別紹介記事をご参照ください。
市民から寄せられた多数の要望の分析や、要望を深掘りして社会課題に変換するためのツールです。
政策課題を深掘りして分析し、課題の解決策となる政策とその提言先を模索するためのツールです。
政策案を複数の側面から簡易的に評価し、改善するためのツールです。
政策案や社会課題に関連するステークホルダーを推測してマップ化するためのツールです。
目指すインパクトを入力するだけで、ロジックモデルや Theory of Change のたたき台が生成されるツールです。
政策案に関するステークホルダーの立場を把握し、実際に起こり得るステークホルダーの反応やそれを踏まえた政策改善案を模索するためのツールです。
政策案などの複数アイデアを複数人で比較、評価する際に使用できるツールです。二つのアイデアを比較するという直感的な判断を繰り返すことで評価が可能です。
政策案などの複数アイデアを複数人で比較、評価する際に使用できるツールです。階層分析法 (AHP) と呼ばれる既存の手法の一種を実装しています。
PEP では、今後も PEP by Tech を始めとした政策起業家への支援のアプローチを継続する予定です。
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