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受賞作

受賞者スピーチ

選考委員コメント

無国籍児は、子どもであるため声をあげにくい(あるいは無国籍であることに気付いていない)だけでなく、無国籍であることで人権が制約されていたり、生活苦を抱えたりするなど、二重・三重に苦しい立場に立たされている。本記事は、このような日本における無国籍児問題を丹念に取材し、事実を冷静に提示することを通じて問題の本質を明らかにし、読者の胸に強く訴えかける。 とりわけ、多様性の必要が叫ばれる日本社会において、今後、いかに外国籍の人たちや国籍を持たない人たちを包摂していくのかという問題提起をし、日本社会のあり方へ一石を投じる内容となっている。「光の当たりにくい社会課題を取り上げ、政治や行政、世論にインパクトを与えた報道」という現場部門賞の趣旨に合致していると判断した。

受賞者コメント

今回はたいへん名誉ある賞をいただき、ありがとうございました。私がいちばん感謝しなくてはならないのは、この記事の主人公の三木幸美さんやお母さま、コメントやサゼッションをいただいた皆様です。今回の取材は「取材対象者」がいちばん驚いたのではないかと思います。本人は子ども期の一定時期「無国籍」状態にあったと思い込んで生きてきたのに、たまたま取材によって、じつは本人には内緒で母親が外国で国籍を取得していたということがわかったからです。取材行為は「生き物」だと思います。想定外の転がり方や展開をします。それがノンフィクションの取材の醍醐味であり、それに身をまかせて取材者も学んでいくのだと思います。

  • 藤井誠二(ふじいせいじ)

    1965年生まれ。高校時代より社会運動にかかわりながら、取材者の道へ。著書に、『殺された側の論理 犯罪被害者遺族が望む「罰」と「権利」』(講談社プラスアルファ文庫)、『光市母子殺害事件』(本村洋氏、宮崎哲弥氏と共著・文庫ぎんが堂)、『「壁」を越えていく力』(講談社)、『少年A被害者遺族の慟哭』(小学館新書)、『体罰はなぜなくならないのか』(幻冬舎新書)、『死刑のある国ニッポン』(森達也氏との対話・河出文庫)、『沖縄アンダーグラウンド』(講談社)など著書・対談等50冊以上。愛知淑徳大学非常勤講師として「ノンフィクション論」等を語る。ラジオのパーソナリティやテレビのコメンテーターもつとめてきた。