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アメリカ人に気候変動に注目してもらいたいなら、「気候変動」と呼ぶだけで十分です(ワンディ・ブルイネ・デ・ブルイン、ゲイル・シナトラ)
今回は、非営利のオンラインメディアサイト The Conversation から、以下の記事をお届けします。
翻訳元:Wändi Bruine de Bruin and Gale Sinatra, If you want Americans to pay attention to climate change, just call it climate change, The Conversation, 2024/8/12
最近、「気候危機 (climate crisis) 」や「気候非常事態 (climate emergency) 」、「気候正義 (climate justice) 」といったフレーズをよく耳にするかもしれません。これらは、気候変動の緊急性やその影響を伝えようとする試みです。この危険は現実のものですが、このような言葉遣いは実際に説得力を持つのでしょうか?
最近、私たちが5,137人のアメリカ人を対象に行った全国代表サンプル調査によると、アメリカ人は「気候危機 (climate crisis) 」や「気候非常事態 (climate emergency) 」、「気候正義 (climate justice) 」よりも「気候変動 (climate change) 」や「地球温暖化 (global warming) 」により親しみを感じ、関心を持っています。
さらに、「気候変動 (climate change) 」の代わりとなるこれらの用語が、人々の緊急性の認識や、気候に優しい政策を支持する意欲、行動する意欲を高めるという証拠は見つかりませんでした。
「気候変動 (climate change) 」や「地球温暖化 (global warming) 」といった馴染みのある用語は、「気候危機 (climate crisis) 」や「気候非常事態 (climate emergency) 」と同等か、場合によってはそれら以上に関心を引き出し、緊急性を感じさせ、行動する意欲を喚起しました。「気候正義 (climate justice) 」はこれらの点に関して一貫して劣っていましたが、おそらく最も馴染みが薄い用語であるためでしょう。共和党支持者、民主党支持者、無党派層の間で回答に大きな違いはありませんでした。
シンプルに保つ
私たちは心理学研究者として、アメリカ人がどのように気候変動についてのコミュニケーションに反応するかを研究し、簡潔な言葉遣いの必要性を明らかにしました。
例えば、2021年に発表した研究でインタビューした人々は、「適応 (adaptation) 」や「緩和 (mitigation) 」、「持続可能性 (sustainability) 」、「二酸化炭素除去 (carbon-dioxide removal) 」といった専門用語が難解であると感じていました。回答者は専門家にもっと馴染みのある言葉を使ってほしいと望んでいました。
気候関連の用語に馴染みがあると答えたアメリカ人の割合
2023年の全国代表サンプル調査では、5,137人のアメリカ人を5つのグループに分け、以下の用語のうち一つをそれぞれのグループに提示して「この用語に馴染みはあるか」と質問しました。以下の棒グラフでは「はい」と答えた人の割合を示しています。
これがきっかけで、私たちは『The Conversation』で気候専門用語のクイックガイドを書きました。日常的な言葉遣いを使うことで情報が理解しやすくなり、高学歴の人々でもそれを好む傾向があります。
しかし、専門家は自分たちには馴染み深い複雑な専門用語を使うことが多く、それが他者には馴染みがないことに気づいていないかもしれません。
用語の進化
「気候変動 (climate change) 」と「地球温暖化 (global warming) 」が同じ意味で使われることが一般的になっていますが、実際には違いがあります。「気候変動 (climate change) 」は全体的な気候の変化を指し、「地球温暖化 (global warming) 」は特に温度上昇を指します。
過去の調査では、一般に「気候変動 (climate change) 」という用語は「地球温暖化 (global warming) 」という用語と比べて、人間が積極的に地球を温暖化させているという考えと結びつけられる可能性が低かったことが分かっています。おそらくこれが、民主党支持者が「地球温暖化 (global warming) 」という用語を好んだ理由であり、「気候変動 (climate change) 」という用語の普及はジョージ・W・ブッシュ政権の顧問であるフランク・ランツ氏によるものとされています。
また、過去の調査では、民主党支持者は「地球温暖化 (global warming) 」を「気候変動 (climate change) 」よりも深刻だと考え、一方で共和党支持者は「気候変動 (climate change) 」を「地球温暖化 (global warming) 」よりも深刻だと考えていました。しかし最近のレビュー論文によれば、これらの党派的な違いは今では薄れ、多くの共和党支持者と民主党支持者が両方の用語について関心を示す傾向があります。
気候関連の用語に関心があると答えたアメリカ人の割合
2023年の全国代表サンプル調査では、5,137人のアメリカ人を5つのグループに分け、以下の用語のうち一つをそれぞれのグループに提示して「この用語に関心はあるか」と質問しました。以下の棒グラフでは「はい」と答えた人の割合を示しています。
「気候危機 (climate crisis) 」や「気候非常事態 (climate emergency) 」、「気候正義 (climate justice) 」といった代替用語は、気候変動の他の側面を強調し関心を高めようとするために使われています。2019年にはイギリスの新聞『ガーディアン』が緊急性を伝えるために「気候危機 (climate crisis) 」や「気候非常事態 (climate emergency) 」を使用するようになりました。
活動家たちは、「気候正義 (climate justice) 」という言葉を使って、気候変動の原因には最も関与していない低所得者層が最も気候変動の影響を受けているという、人権問題としての側面に注目を集めようとしています。
結論: 過剰な表現は避けましょう
現在、「気候危機 (climate crisis) 」、「気候非常事態 (climate emergency) 」、「気候正義 (climate justice) 」といった用語は、「気候変動 (climate change) 」や「地球温暖化 (global warming) 」ほど馴染みがなく、それほど関心を引き出していません。
これらの用語が一般的になったとしても、それが関心を高めたり行動を促したりする保証はありません。実際、「気候危機 (climate crisis) 」といったフレーズは、人々に響かなければ逆効果になる可能性さえあることが研究で示唆されています。
私たちからのアドバイス: 過剰な表現は避けましょう。人々が理解できる馴染み深い用語を使ってください。温度上昇について話すときは「地球温暖化 (global warming) 」を使い、全体的な気候の変化について話すときは「気候変動 (climate change) 」を使いましょう。
著者:
ワンディ・ブルイネ・デ・ブルイン (Wändi Bruine de Bruin)、南カリフォルニア大学プロボスト教授
ゲイル・シナトラ (Gale Sinatra)、南カリフォルニア大学教授
翻訳・監修:野澤