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政策起業家について

明日の政策を起こす「政策起業家」

官僚や政治家だけでは解決できない複雑な政策課題に向き合い、公のための課題意識のもと、 専門性・現場知・新しい視点を持って課題の政策アジェンダ化に尽力し、その政策の実装に影響力を与える個人のことを「政策起業家」と呼びます。

政策起業家とは

  1. 社会課題等の解決手段となる特定政策を実現するために、情熱・時間・資金・人脈、そして革新的なアイデアと専門性といった自らの資源を注ぎ込み、

  2. 多様な利害関心層の議論を主宰し、その力や利害を糾合することで、

  3. 当該政策の実現に対し影響力を与える意思を持つ個人(または集団)

<参照文献> Aviram et al(2019), “Wind(ow) of Change: A Systematic Review of Policy Entrepreneurship Characteristics and Strategies”, Policy Studies Journal, Vol 48, No 3.; Kingdan(1984), “AGENDAS, ALTERNATIVES, AND PUBLIC POLICIES”,Pearson Education Inc.; ジョン・キングダン/笠京子訳『アジェンダ・選択肢・公共政策 政策はどのように決まるのか』(勁草書房、2017年); 船橋洋一(2019)『シンクタンクとは何か 政策起業力の時代』(中央公論新社)

 

政策起業家」を知るための『シンクタンクとは何か』

世界大戦や恐慌など、歴史上の危機から生まれたシンクタンク。革新的なアイデアをもとに政策を提言し、社会を動かしてきた。ポピュリズムの台頭や中国とロシアが仕掛ける「情報戦争」に直面する今、シンクタンクの「政策起業家」たちはどう応えるのか。「シンクタンク小国」日本の課題は何か。米国の現場を知り尽くし、現在は自らシンクタンクを率いるジャーナリストが、実体験を踏まえ、国際政治の最前線を描く。

出版社の許可を得て、API が 2019 年に刊行した『シンクタンクとは何か』(船橋洋一 著)の第一章・第二章を無料公開することといたしました。第三章以降はAmazon(Kindle版)にてお買い求めいただけます


時代がシンクタンクをつくり、シンクタンクが時代をつくる(第1章)

危機の時代の産物 / シンクタンクとは何か / 大学、メディア、コンサルとの違い / 議論の場を主宰する力 / 提案なくして敬意なし 


米国シンクタンクの政策起業力(第2章)

外交問題評議会と『フォーリン・アフェアーズ』 / ブルッキングス研究所と大恐慌 / 「ガバナンスの改善が仕事」/ 〝防衛知識人〟たち / ベトナム戦争の後遺症

今なぜ政策起業家なのか

「政策」は、官僚や政治家のみがつくるものでしょうか。
高い専門性を抜きには語りきれないテクノロジーの進展や、 現場知なしでは拾いきれない社会のニーズの多様化が叫ばれる令和の時代。 従来の省庁体制・法体系にとらわれたまま、今まで通り霞が関の立案能力だけに頼るだけでは、 現代の、そして未来の多くの課題は解決できません。 そこで、政・官・民・学・NGO/NPO 等が職種の垣根を越えて、 教育・子育てからテクノロジー、環境から外交安全保障まで、ありとあらゆる分野の社会課題解決 のため真剣に政策過程に向き合い、政策を「起業」する時代が到来しています。

政策起業家の要素

Mission
公益に対する情熱と志

単なるエージェントとしてではなく個人的な志や情熱を持ち、そしてその課題意識が公のためになることが政策起業家には必要不可欠です。特定の企業や業界の利益誘導のための政策追求は政策起業とは呼べません。

Strategy
アジェンダ・セッティング力

現場知・専門知・新しい視点を持って政策課題を発見する力、また、政策上優先度の高い課題を主題とする力を持っていることが重要です。その課題をアジェンダ化するために、世の中が動く「政策の窓」を察知し、メディアを通じて人々の認知を向上させたり、政策従事者に提起したりする能力も必要となります。

Impact
政策イマジネーション


政策実現のために粘り強く時間・お金・専門性などを投下し、政治家、官僚、自治体、関連団体などを巻き込んで利害の糾合・調和を図り、「実装」に影響力を与えることを指します。この実現には、革新的なアイディアや、政策プロセスに対する理解と、そのプレイヤー達の行動インセンティブに対する理解、つまり「イマジネーション」が不可欠です。

PEP が提唱する「政策起業家」に関する Q&A

Q. 政策起業家は特定の分野・職業の人物なのでしょうか?
いいえ。医療福祉、外交、経済、テクノロジー、教育…全ての政策分野で政策起業家は活躍しています。法制度を熟知した弁護士から、現場知を持つ社会起業家や民間事業者、政策研究・実装をするシンクタンク、理論に精通する学者まで、政策実現に影響を与える多様なプレーヤーが政策起業家たり得ます。

Q. 政策起業家は個人でないといけないのでしょうか?
先行研究では、個人でも団体でもあり得る概念として捉えられています。PEPプロジェクトでは、社会を動かす個人の原動力に注目しています。

Q. 政治家・官僚は政策起業家ではないのでしょうか?
先行研究からは、政治家・官僚も政策起業家になり得ると考えられます。但し、政策起業家は意思決定者ではありません。その観点から、PEPプロジェクトでは、むしろ政治家の皆さんは政策起業家が提言した政策を意思決定・実現する「パートナー」であると考えています。また、政策を熟知し、本業として政策に取り組まれる官僚の皆さんと協働できる、在野のプレーヤーの裾野を広げることを目指しています。