PEP Talk『「働き手不足1100万人」の衝撃』 - 著者の古屋 星斗氏に直接インタビューで深掘り!を公開しました。
PEP Talk『官民共創のイノベーション』を公開しました
PEP Talk『官民共創のイノベーション』 - 編著者の中原 裕彦氏、池田 陽子氏に直接インタビューで深掘り!を公開しました。
ぜひご覧ください!
本インタビューの文字起こし
※以下の文字起こし作成には、AI(Notta及びClaude 3)を利用しております。細部の表現や記述に動画との差異が存在する可能性がありますため、本インタビューの内容を引用される際は、本動画を参照した上で動画からの引用をお願いいたします。
馬田
PEPディレクターの馬田です。PEP TalkはPolicy Entrepreneur's Platform略してPEPが行っている政策起業家のための動画とポッドキャストです。今回は2024年3月に『官民共創のイノベーション 規制のサンドボックスの挑戦とその先』を書かれた編著者である中原さんと池田さんにお話を伺いました。スタートアップや新規事業はとても新しい取り組みをします。それであるがゆえに、既存の規制とぶつかり合ってしまうこともよくあります。そうした状況の中、官民が互いに対立するのではなく、同じ方向を向いて真にイノベーションを起こしていく、そのための連携する仕組みとして、規制のサンドボックスというものが2010年代に日本でも導入されて、多くのイノベーションが実現してきました。その取り組みを官の側で取り仕切って実現されてきたお2人の話をお伺いしています。ぜひお聞きください。
馬田
今日もよろしくお願いします。今日は『官民共創のイノベーション』を書かれたお2人、中原さんと池田さんにお越しいただきました。よろしくお願いします。
中原
よろしくお願いします。
池田
よろしくお願いします。
馬田
はい。同じ場所からの出演ということでPEP Talkでは初めてこういう形でのご出演になったんですけど、ぜひうまくやっていければと思います。よろしくお願いします。早速ですがこの本を既に読まれた方もいらっしゃるかと思いますけれども、ぜひお2人のことを知らない方々のために、これまでお2人がどのような活動をされてきたのか自己紹介も兼ねて簡単に中原さんからお伺いしてよろしいでしょうか。
中原
はい。中原と申しますよろしくお願いします。私自身はですね規制改革実施計画、未来投資戦略などの政府の成長戦略の取りまとめ関係の仕事ですとか、それから会社法、倒産法、信託法などの企業組織に関連する法制の整備、不正競争防止法などの知的財産関係の法制の整備、そして今回のご紹介をさせていただくような規制のサンドボックスの創設を柱とする産業競争力強化法の改正といったような形で、今できないことをですねどんなふうにできるようにして、そしてそのルールメイキングのような形で、事業者のみならず国民の皆様の福祉の向上というふうに繋げていくかという仕事をしてきたところでございます。よろしくお願いします。
馬田
よろしくお願いします。池田さんもよろしくお願いします。
池田
はい。池田陽子と申します。よろしくお願いいたします。私自身は経済産業省の出身でこれまでイノベーション政策、あとルールメイキング、グローバル、そういった軸でキャリアを積んできました。2022年からは内閣官房に出向しておりまして政府全体のスタートアップ政策の取りまとめをしております。それと併せてですね、これはライフワークの一環なんですけれども、経済産業省にRIETIと呼ばれる経済産業研究所、いわゆる経産省のシンクタンクに当たる組織がございまして、そのコンサルティングフェローのお仕事もしております。そこでまさにルールとイノベーションの研究を行っていて、代表作というのもあれなんですけれども、筑波大学発のスタートアップのCYBERDYNEのグローバルなルール形成戦略についての論文をTechnovation誌に出させいただいたりもしております。ちょうどそのCYBERDYNEの論文は馬田さんの『未来を実装する』でも取り上げていただいたこともありましてその節はありがとうございました。ということで私の自己紹介は以上です。
馬田
ありがとうございます。お2人の経歴的にもっと本当に個別のことをいろいろと聞いていきたいっていうところもあるんですが、今回はこの官民共創のイノベーションのおそらく中心になっている規制のサンドボックスに関してぜひいろいろとお聞かせいただければというふうに思っております。
馬田
早速ですが、この『官民共創のイノベーション』まだ読んでない方もいらっしゃるかと思いますので少しだけ簡単に概要を教えていただいてもよろしいでしょうか?
中原
まずですね、サンドボックスっていうのは砂場という意味でありまして、砂場であればその場でお子さんがいろんな乗り物とか建物を作ったりとか壊したりとか試行錯誤ができる、すなわちいろいろな新しいチャレンジができると。しかし、砂場で例えば親御様が監督してお子さんを監督している限りにおいてですね、他の方にご迷惑をおかけすることはない。すなわち他の方にご迷惑をすることなく新しい試行錯誤、トライアルすることができるというそういうものを行いながら規制改革に繋げていこうというそういった制度でございまして、まず最初に規制のサンドボックスができる制度創設の経緯とか、その制度の概要、それがサンドボックスを越えて今後のルール形成にどういうことを示唆しているのかということをまずご説明しています。それから、こうしたものを理解するにあたって避けて通ることのできないスタートアップの意義と役割ですとか、あるいは、破壊的イノベーションのフェーズでどういうふうに政府とスタートアップとの役割形成あるいは役割分担、協業、共創というのがあるのかというようなことを論じています。それから三つ目に、このそれぞれのサンドボックスのこれまでの、大体約30計画、約150社ぐらいの皆さんにご尽力をいただいてるわけですけれども、その中でいくつか特徴的な個別の案件も掲げさせていただきまして、それぞれの案件を担当した担当行政官の視点からのケーススタディというものを紹介させていただいています。次にこのサンドボックスの創設にご尽力いただいたりあるいは現在もご尽力いただいている新技術等効果評価委員会というのがあるんですけど、そこの委員の皆様との座談会ですとか、それから今新しいルールメイキングに取り組んでおられる、スタートアップ、あるいはイノベーションを使って地域住民の生活を豊かにしていこうという自治体の皆様のインタビューといったことを時代の変革者たちの声という形で掲げさせていただいてます。最後にイノベーションの展開に鍵となる企業の法務機能のあり方について、当然ディフェンシブなことでガーディアンとしての機能というのもあるんですけれども、そこをさらにクリエイティブにですね、法務の観点からどんなふうに新しい事業活動の領域の創設に尽力していただくかといった法務機能の新たな展開のあり方といったことについても論じているというようなところでございます。
馬田
ありがとうございます。聞いてるだけでも盛りだくさんで、実際に読んでてもかなり労作なんじゃないかなっていうのが、もうそもそもの規制もかなり苦労されたと、規制のサンドボックスもかなり苦労されたと思いますし、そこで出てくる背景の説明、事例、対談そして今後の流れ、法務機能の流れとかも含めて、というところですごく盛りだくさんな本だと私も読んでて思いました。その上で、この節の本で、他のところで確か池田さんが「初めての官僚のルールメイキング本です」みたいなことをおっしゃられたかなと思ったんですけれども、官僚作なんですけどかなり生々しく事例とかも掲載されてる書籍はかなり珍しいんじゃないかなというふうに思ってます。どういう経緯でこの本をまとめようと思ったのか、その理由とか背景とかあればぜひ教えていただいてもよろしいでしょうか?
池田
最初に私の方からの出版の経緯を簡単にお話をして、その後中原さんの方からもお話いただきます。今回の出版経緯なんですけれども、振り返りますと2020年に先ほど申し上げたRIETIと呼ばれる経済産業研究所でセミナーを企画したんですね。「『サピエンス全史』から考えるルールとイノベーション」というテーマでやりまして、それで思いがけなくもたくさん反響をいただいて書籍化のお声掛けをいただいたというのがきっかけです。そのセミナーも先ほど申し上げたCYBERDYNEの論文をきっかけに、そこから規制のサンドボックス制度の創設のお話をメインで中原審議官からしていただきまして、そのときも単に制度の客観的な概要だけではなくて、官民問わずどこにいようとも挑戦をする気持ちを後押しする、すごく前向きなメッセージを発したことが、強い共感を呼んだんだなというふうに思っています。その後ですね、我々もそれぞれ本業に邁進しつつ、コロナ禍ではDXが多分我々の想像を超えるような勢いで急速に進展したりですとか、あと2022年には岸田政権を挙げてのスタートアップ創出元年、プレーヤーとしてのスタートアップの裾野も一気に広がりましたし、ちょうど昨年2023年は、規制のサンドボックス制度創設が2018年ですのでちょうど5年の節目の年ということもあって、今こうして改めていろんな社会的な機運の高まりも肌身で感じるところを、出版の経緯はこういうちょっと長いストーリーがあるんですけれども、結果としてはすごくベストタイミングでの出版になったのかなと自負しているところです。
中原
池田さんから今お話いただきましたようにちょっと時間がかかってしまいましたが、何とか出版にこぎつけることができました。それで馬田さんから今お話がありましたように、具体的なことを担当行政官も含めてどんなふうに感じているのかというようなことを書かせていただいてるんですけれども、それはやっぱり新しいルールの変更とかルールの形成がされるときというのは、一般には世の中の皆様は、変わったルールがどういうものかというところに、注目されることはあるかと思います。またそれに加えてルールのそもそもの中身が何なんですかというようなことにもちろん議論をされることもあるとは思います。しかし、このルール形成の過程には、その前段で、それにまつわる、例えばそういったことを提案してくださった民間事業者の方ですとか、あるいはそういったものがサステナブルになるようにいろんな議論を尽くしてくださった方ですとか、ひいてはこれは私どもの手前味噌で恐縮なんですけど本当にそういう中で苦労してもらった同僚の行政官の皆さん、こういった人たちがいろいろな議論をしながら作り上げてきているというものでありまして、この過程をですね、ご覧をいただくということが今後の新しいルール形成のあり方に一石を投じられることができるのではないかと。つまりこうした皆様で具体的にみんなで作り上げていく、その過程の有り様というのをですねご覧いただくことで、今後の建設的なルール形成に貢献できるのではないかというふうに思った次第でございます。
馬田
なるほどです。いつもだと綺麗な結果とか、あるいは成功しましたみたいな大々的な物しか発表されませんが、今回の本は本当にその過程である意味失敗談的なところもちょっと含めつつ生々しい話が入っていて、これがルール形成で行われている本当の流れなのかっていうのが感じられる本なのかなというふうに思った次第でした。その中で、背景も説明あれば事例もいっぱいあれば、対談もあるみたいな盛りだくさんの本なんですけれども、特に読みどころとか思い入れのある部分とかあればそれぞれ教えていただいてもよろしいでしょうか?
中原
まず、第1章から第5章までそれぞれ内容も多岐にわたっておりますので、全部なんですけれども、ちょっと私が個人的に感じているところを申し上げますと、まずやっぱりサンドボックスに関するところで言いますと個別のケーススタディーのところはですね、それぞれの分野で、例えばモビリティであったりとか医療であったりとか金融であったりとかあるいは不動産であったりとか、かなり違った分野のものを入れさせていただいておりまして、言ってみればですね、それぞれの分野にご関心のおありの方がその当該分野をご覧いただくということも非常に有益だと思うんですけれども、例えば、医療の分野でお考えになってる方が、他分野で何が起きてるかというようなことをご覧いただくっていうことも、他分野で起きている知恵というかくぐり抜け方っていうのをこの分野で応用できないかというような形でご覧いただくようなこともですね、必要に応じて参考になるのではないかなというふうに思いますので、ケースのところは本当にそれぞれのご関心のみならず、他分野のことを知るという意味でもご高覧をいただければと思いますし、それからさっき馬田さんがおっしゃいましたけど、担当者が「こういうところはうまくいかなかった」とか「こうやったらうまくいった」とかいうのは結構率直に書いてますので、そういったこともまた参考にしていただくのが非常に有益ではないかなと思っております。それから、私は第1章のサンドボックスの政策その創設経緯とか制度の概要というところを説明しているんですけれども、役所によって法律を作るときにはどんなことを考えているかというようなことも書かせていただきましたし、それから今後のルール形成に期することということで、例えば前例とか、あるいは法的な三段論法とかですね、あるいは分かりやすいストーリーということで説明する習慣とかそういったものがひょっとしたらイノベーションの可能性っていうのを閉じてるかもしれないので、そこのフラストレーションが感じる曖昧なところをですね、現実を直視しながら、新しい政策形成に繋げていきましょうというようなことを論じていまして、若干少し法律の先生に怒られるようなこともあるかもしれませんけど、その辺もご高覧をいただければと思っております。それから、時代の変革者たちの声としてインタビューを掲載したところはですね、自治体の方ですとかそれから新しくサンドボックスを利用された方も含めて、まさに新しい技術、ビジネスや社会変革の萌芽となるようなことが結構述べられておりまして、それで私が一章で述べたことと実際にその方たちがおっしゃってることっていうのは、結構同じことを言ってるんですけど、言葉の使い方が違うんですね。私もインタビューとか座談会で有識者からお話をお伺いする中で「これ俺が書いたことじゃないか」と思っているようなことも結構あって、ただ言葉の使い方が違うんですね。言葉の使い方が違うんですけど、結構似たようなこと、同じことを書いたり言ったりしていまして、従って、何かある一つの事実を見るときに人の見方っていうのは事実の捉え方を、そのターミノロジーで言うとこんなふうに違うんだなっていうようなことも感じたりしていますので、そんなところもご覧いただきながらですね、皮膚感覚でですね、感じるようにイノベーションを理解していただきたいというふうに思っています。法務機能のところも、ナビゲーション機能、クリエーション機能ということで法務の皆さんにはリスクテイクという意味では非常に大きな貢献をしていただきたいということを、将来志向の前向きな気持ちで述べていますので、そんなところもご高覧をいただければというふうに思います。
馬田
もうほぼ全部っていう感じなんですね。削ってこのサイズになったみたいな感じで。でもおっしゃられたように、いろんな事例とかいろんな角度からルールのイノベーションというものを見られる本なのかなというふうに聞いてて思いました。ぜひそうした観点で読むと確かに改めて読んでみたいなと今聞いてて思った次第です。池田さんの方でもし読みどころとか思い出の部ある部分とかあったりしますか。
池田
本当に多くの方にご協力いただいて出来た本なので、中を開けば、今中原さんがおっしゃった通り、もう一つ一つエピソードは尽きないんですけれども、あえてですね、世の中で、「外見というものは一番外側の内面である」という格言があると思うんですけれども、それに則って、表紙とお答えさせていただきます。まず、この東大の松尾豊先生の「しかし法律は変えられるのだ」という帯文、そしてこの表紙の絵は東大のスタートアップであるスタートバーンの施井 泰平社長に書いていただきまして、お2人のこの表紙におけるご貢献を改めて強調させていただきたいなと思います。お2人がですね、この本のメッセージに本当に共感してくださって、それぞれの形でそれを完全に体現してくださったことが嬉しいなと思いますし、そういうふうにこの本を作るプロセス自体が、まさに官民共創のイノベーションだなというふうにも感じましたので、すごく印象に残っています。お2人には心から敬意を表しまして、本の一番最初のページに松尾先生の推薦文の全文と、あと施井さんによるこの表紙の作品の説明文も入れていますのでぜひお読みいただければ幸いです。
馬田
いやまさか表紙が来るとはっていう感じでした。いや、ちょっと確かに開いてみると本当に最初のページに推薦文と表紙の絵に対する解説があって、すいません、ちょっと読み飛ばしてたかもしれないので。でもそうした著者の方からのコメントをいただけるとまた改めてこの本読んだら、気づきがあるような気がしました。ありがとうございます。
馬田
ちなみに、先ほどの話の中であるいは本の中でも書かれてますが今回、規制のサンドボックスを中心とした本になっていますが、実例が150ぐらいあるみたいなお話があったかと思います。その中で今回一部の事例が掲載されてると思うんですが、この特定の観点で実際にやった規制のサンドボックスの事例で思い入れのある事例とかってあったりされるんでしょうか?
中原
これ全て思い入れがありまして、これだけっていうふうに言うのはなかなかちょっと難しいんですけど、今回本に記載をさせていただかなかった事例の中にも相当にイノベーションという観点から注目すべきものがあるかなというふうに考えております。それで今回の個別の事例もそうですし、それからその時代の変革者たちの声というところの中で、私が読者の皆様にできればご覧いただきたいなと思ったりしていますのは、イノベーションっていうものを考えたときは、イノベーションとなる最初のアイディアっていうのは、例えば万人に晒したらそれいいねとかいうふうに思うものでないものもあるかもしれません。また、それから美しい絵で「こういう世の中ができるんだよ」というふうにプレゼンテーションをいただいたときに、でも何がポイントかっていうのは必ずしもよくわからないことっていうのはあるんだと思うんです。衆目から着目されておらず非常に技術的に見えるかもしれないものの、ここを解決しないと物事って大きく動いていかないんじゃないかっていうボトルネックっていうものがある。ここをどういうふうに見つけていって、そこをどう解決していくか、というようなことが非常に重要だと思っています。どちらかというと私はですね、あんまり乱暴な言い方すると良くないですけど、見かけに騙されるなというか、どこに本質があるかっていうのは、やっぱり実際の起業家のスタートアップの皆様とか、あるいは手前味噌で恐縮ですけど私どもの同僚の行政官といった、実際に実証や実装に苦労した者にしか分からない。ここをできれば解決するんだよというな形で努力していったりとか、あるいは自治体の方とかが、現場のリアルの検討の過程でここがボトルネックだというふうに気づいてそこを解決して決まっていったというようなですね、そんなフレーバーを全般にわたって理解して感じていただけると非常に嬉しいと思っております。
馬田
ぜひそうした観点で事例を改め読めていければなと思います。池田さんの方も何か追加でございますでしょうか?
池田
私自身はこの規制のサンドボックスの案件形成に携わったことはないんですけれども、一つ挙げるとすると、金融機関向けのマネーロンダリング対策サービスをやっているカウリスさんと関西電力さんの事例ですね。カウリスさんは、もう本当にたまたまなんですけれども、この本の出版間もないタイミングで上場するというニュースが入ってきて、本当に我々一同奇遇だねと驚きました。しかもそれが規制のサンドボックスを使って風穴を開けて新しい市場を作って、それで上場されたという、島津社長もそういうふうに対外的にもご説明されていらっしゃると思うんですけれども、そういう点で本当に素晴らしくて、それに続くスタートアップがこれから続々生まれたらいいなというふうに本当に思っております。あとこのカウリスさんの話は関西電力さんとの連携事例なんですけれども、大企業とスタートアップのオープンイノベーションの成功ケースとしてもすごく興味深いと思いますので、ぜひこの第3章の事例分析のページですね、じっくりお読みいただければと思います。
馬田
確かにタイミング的にはぴったりですよね。本当にびっくりしました。この本の中だと1社しかまだIPOしてないっていうふうな話だったと思うんすが、もう実は出るころには2社目が出てたみたいなことですもんね。すごいなと思いました、改めて。では早速、ぜひ少しだけ中身の方に入っていきたいんですけれども、今回規制のサンドボックスがかなり中心的なテーマになってきていて、それを進める上のプロセスの紹介などもこの本の中でされていたかと思います。その中で私が理解した範囲ですとプロセスとしてプロジェクトの作り込みが最初にあって、主務大臣による認定があり参加者の同意があるなどそうしたプロセスが挙げられていたかと思うんですけれども、実際にこれからどんどんとスタートアップの皆さんが続いていく、規制のサンドボックスに申し込んでいく、始めていくっていう上で、特にどのあたりが大変でどのあたりに気をつけてほしいのか、この辺りもぜひお伺いしてよろしいでしょうか。
中原
サンドボックスのプロジェクトの認定は主務大臣から得て、その上で参加者の同意というのを得ていくわけなんですけれども、これもどこがポイントかっていうのは、個別のプロジェクトによるところが大きいところです。私がチーム長をやっていたような規制のサンドボックスの窓口にご相談いただくとですね、それなりに一緒に考えて、伴走させていただくんですけれども、一番考えて頂く必要があるかなと思いますのは、プロジェクトの作り込みのところで、法制的な論点が例えばあったとして、それを実際にサンドボックスの中でそこの改善とか改革とかいったものを提案していくためにどういうふうに具体的にプロジェクトを作っていくかというところが非常に重要なポイントになるのかなというふうに思っております。このプロジェクトっていうのは本当に実際のリアルマーケットの中で、あるいはリアルマーケットに近いようなところで行うということが非常に多くございまして、それが主要なターゲットになるということがほとんどだと思うんですけれども、そこをどんなふうに作り込んでいくかというところが、非常に頭を使うところかなというふうに思います。しかし、それが耳を揃えてきっちり出来上がった上で、サンドボックスの相談窓口に来ていただくというよりは、もうある程度のアイディアがおありになるときからですね、もう窓口を叩いていただいて、私達と一緒に考えさせていただくというふうにすることが有益ではないかなと思っております。政府のサンドボックスの窓口では、まだお考えが固まってないときでもお越しくださいというふうに訴えていまして、それによって議論していく中でそのお考えが明らかになっていくこともあります、ということを述べさせていただいているところです。また逆に実際にそういうふうにサンドボックスでっていうふうに議論している過程の中で、これってもうこのままやれるんじゃないかっていうふうに思われて、そのまま新しいビジネスをスタートさせるというようなこともあり得ます。まずはやっぱりプロジェクトの作り込みは重要で、実際にお客様にビジネスモデルなりサービスを訴えかけていくっていうことをどんなふうにおやりになりたいのかっていうなことを作り込んでいく、というところが一番大きなポイントになるのかなというふうに思います。
馬田
やっぱりプロジェクトの作り込みが大事で、ただそれを自分というかスタートアップ側単独でやる必要はなくて、早い段階でご相談に行くっていうのは結構大事っていうことでしょうか?
中原
ご指摘の通りだと思います。私たちもそれを通じていろんな提案とかをさせていただくこともできると思います。いやそれだと現場は回らないよということであればまた新しく考えていくっていうこともあるのかなと思います。
馬田
ちなみに150、もう既にあるというふうなところで、多分相談件数もっと来てるんじゃないかなと思うんですけれども、規制のサンドボックスにこんなに来るとはっていうふうな思いなのか、それとももっと来てほしいっていう思いなのかでいうと、どうなんでしょうか。
中原
約150社の方に御利用いただいて30計画ぐらいなんですけれども、私は個人的にはもっと来ていただければというふうには思っておりまして、本当にこの本でもちょっと書いたんですけれども、この国には面白いことをお考えの方っていっぱいいらっしゃるんですね。これを何とかしてマーケットにいい形で出すようなことを私達もできればというふうに思っていますので、これは個人的な意見ですけども、もっと来ていただきたいなというふうに思っております。
馬田
スタートアップの皆さんもっと行っていいんだっていうのをぜひ私も伝えていきたいなというふうに思います。
馬田
では少し次の質問に行かせてください。今回の規制のサンドボックス、ある意味制度のProof of Conceptとか規制緩和のPOCみたいなこととも言えるのかなというふうに見てて思っております。逆にPoC地獄とも言われて、とりあえずやって実証実験してみたけどそこで終わっちゃう、みたいなこともよくあるっていうふうに、一般的なPoCだとあるのかなと思っています。そういう意味で言うと規制のサンドボックスが一通りサンドボックスの中でやってみた後に、そこで終わらないように、その次に一歩先に行くための必要な考え方とか、もしくは何か相談行くときに考えてほしいこととか、もしありましたらぜひこちら教えていただいてもよろしいでしょうか?
中原
今ご指摘いただきましたように一般にはPoCで終わってしまうというようなご指摘自体についてはあるんだと思うんですけれども、一方で企業の皆さんが例えばバーチャル上でやってみるとか、本当に実験室的なところでやってみるとか、IoTの関係だとコンピュータ上でいろいろやってみる、というのは多いかと思うんですけれども、今回の規制のサンドボックスっていうのは先ほど申し上げましたように、実際にリアルのマーケットに近いところで実装的実証といいますか、そういうことを行うということでありますので、むしろ今までPoCで何べんやってもなんか全然外に出れないんだよなという、PoC地獄に苦しんでた方に、こういうマーケットでの実装的実証ができる場を用意したのでむしろこちらに来てください、というような形でご理解をいただくっていうことかなというふうに思っております。実証を終えた後は、今回の規制のサンドボックスの産業競争力強化法ではその結果を踏まえてそれなりに政府として規制改革の進展に努力していかなきゃいけないという規定もありますので、そうした中で事業所管官庁、規制官庁も一生懸命努力をしていくということではないかなというふうに思います。
馬田
一般的なPoCとは違ってかなり実装に近い実証だから、そこの次に行くってのは結構普通に起こってるし、実際に起こってるっていう感じなんですね、きっと。
中原
ご指摘の通りだと思いますね。
馬田
実際に規制のサンドボックスが終わった後も、本当に規制改革などに繋がっていった例の方が割合としては多いという感じなんでしょうか。
中原
今ご紹介した中では実際に移ったものが多いと思います。
馬田
だからこそ規制のサンドボックスにご相談に行くのは良さそうですね。実証では終わらないものになりそうだと。
中原
そういう意味で我々も政府全体として頑張らなければいけないということではあるとは思いますけどね。
馬田
今回この本の冒頭、中原さんの章だったかと思いますけれども、イギリスとシンガポールの取り組みを参考にしながらこの規制のサンドボックス作ったという旨が書かれていたかと思います。逆にそうした海外の新しい取り組みを日本にっていうことはこれまでもあったかなと思いますが、結構今回の日本のサンドボックス制度お2国に比べても先進的かなと思うんですが、この日本のサンドボックス制度を参考にした他国の後発事例などは出てきているんでしょうか?
中原
イギリスとかシンガポールのサンドボックスも確かに勉強させていただきましたが、日本と彼らとの違いっていうのはですね、まずイギリスとシンガポールっていうのは、当初FinTechに限定してたんですけれども、しかしFinTechの定義ってなんぞやということもですね、一般にファイナンスとテクノロジーというふうには言えますけれども、多かれ少なかれどんな金融でもそうですので、スコープを限定するっていうのは我が国において制度を作るときにはなかなか難しいものはあるかなというような印象も個人的にはありました。また、何よりも新技術やビジネスモデルの展開は金融に閉じたものではないので、対象をフィンテックに限定しないこととしました。それから、イギリスとかシンガポールの場合はどちらかっていうと、それによって行政権を行使するときに、その行使の裁量権の行使のあり方としてですね実証的なものを許可しても、裁量権の濫用にはならないよというような意味合いで使ってるのかなというのは、私の個人的ないろんな議論をした感じの印象で、むしろこれを立法事実あるいは制度改正事実として、次のステージに繋げていきましょうというようなところまで大きく発展的に理解をしているというところは、日本の大きなところかなというふうに思っていまして、この後は、例えばこれは私達の制度を学んでくれたかどうかわかりませんけれども、韓国などは分野を限定せずに精力的に運用されておりますし、あるいは間違いがなければドイツなどもですね、同じような形でサンドボックスは作られているかというふうに思います。
馬田
そうなんですね。日本はよく政策が若干遅れているとか言われますが実は日本が進んでいて、それが輸出されていってるんだっていうのを聞くと、少し心強く思います。これに関しても、おそらく皆さんがかなり頑張って実装して本当に成功例を作ったからそれを参考にして、他の国々で行われてきてるのかなと思うので、ぜひこの制度のイノベーションという観点でも日本が先頭に立てるといいなと今話聞いてて思いました。
馬田
では、次のご質問をさせていただければと思います。今回の本の中でスタートアップのオープンイノベーションの相手として従来であれば、オープンイノベーションっていうと企業間連携、スタートアップと大企業とかだったと思いますが、オープンイノベーションの相手としての政府っていうのが存在しているんだというふうな指摘がありましたかと思います。それがさらに『官民共創のイノベーション』という本のタイトルと結びついて、私がスタートアップのご支援をさせていただく中で、確かに政府もオープンイノベーションの相手になるんだなっていうふうなことを改めて気づいた次第でした。実際にこういうスタートアップとかあるいは民間企業全般と政府とのオープンイノベーションの形があるっていうふうな認識っていうのは今増してきているっていう実感などございますでしょうか?
池田
オープンイノベーションの定義を最初に確認した方がいいのかなと思うんですけれども、オープンイノベーションを提唱したのはUCバークレーのヘンリー・チェスブロウ先生だと思うんですけれども、彼が言っているその概念に則ると、オープンイノベーションというのはスタートアップが自社に不足するリソースを外部に求めて利用する、そういう枠組みのことを指していると思うんですね。ここで言うリソースっていうのは、例えば人だったり、お金だったり、あるいはスタートアップが提供するプロダクトに対する将来的な市場とか顧客、そういったものも含まれると思うんですけれども、そうすると一般的にはさっきおっしゃられた通りオープンイノベーションというと大企業とスタートアップの協業事案っていうイメージが確かに特に日本だと強いように思うのですが、そのリソースの出し手として、当然政府も出てきてしかるべきですし、それは例えば政府調達といったそういうお金の面でもあるでしょうし、あるいはまさに今回議論しているルールメイキングという場面で、政府が果たす役割は極めて大きいと思っております。実際私はこのスタートアップ政策に携わっていますけれども、2022年にスタートアップ育成5ヶ年計画を取りまとめましたが、その過程でも、宮内庁以外の全ての役所とやり取りがありまして、今本当にスタートアップ政策に関わっていない役所ってないんじゃないかと思うんですよね。なので、政策のトレンドというものはやっぱりそのときそのときどうしてもあることは否めないのですが、スタートアップ政策が一時のファッションでは終わらずに、本当に根付いているし、これが今DXを始めとしてトランスフォーメーションの時代の中ですごく象徴的な存在だというふうに感じております。
馬田
なるほど。もう政府側としてはいつでも受け入れ体制あるよっていう感じなんですね。
池田
本当にどんどん政府としても引き続き頑張っていかないといけないなというふうに思っています。
馬田
逆にスタートアップ側がその認識をもっと持ってくれると、本当に政府と民間あるいはスタートアップとの連携が進んでいくのかなというふうに今ちょっと思いました。その辺ってスタートアップの皆さんって気づいてるものなんですかね。私の周りはまだかなって感じはするんですけど。
池田
そうなんですね。私の周りはすごく気づいているっていう印象なんですけれど、世界は広いので、気づいてる方と気づいていらっしゃらない方、もちろん温度感はいろいろあろうかと思いますので、引き続きスタートアップ政策の発信であったり、スタートアップ関係者の方とのコミュニケーションはすごく大事に積み上げていきたいなとは思っております。
馬田
ぜひ私達も先ほどの相談とかも含めてもう少し気軽に政府の皆さんと付き合っていく、あるいは場合によっては規制のサンドボックス、あるいは規制などとも、よりイノベーションが起こりやすくなっていくようにしていくっていうところはスタートアップ側の努力が必要なのかなと思ってます。
馬田
では、少し本から外れた質問をさせていただいてもよろしいでしょうか?規制のサンドボックスは今回かなりフォーカスだったかと思いますが、それ以外の何か制度的なイノベーションで注目してるものがあればぜひ読者の皆さんリスナーの皆さんに教えていただいてもよろしいでしょうか?
中原
制度的なイノベーションっていう観点で、抽象的な話になってしまうかもしれないんですけれども、やっぱりサンドボックスによっていろんな制度改革を目指してるわけですが、これから新しい技術とかものが出てきますと、アジャイルガバナンスっていうふうに提唱されてらっしゃる方もいらっしゃるんですけれども、民間の事業者の皆様とそれから消費者の皆様とのいわゆる市場における対話的なものの中でですね、技術的にルールを進化させていくというようなことが今後一層ますます制度全体にも求められてくることになるのかなというふうに思っていまして、そうするといろんなルールというのを性能規定化するという言い方がいいかどうかわからないんですけれども、機能的にルールを作っていくというようなことが必要になってくるんだと思います。そうなるとしかし、それは民民の技術的な取り組みですとか、場合によっては司法手続きなどを通じて解決していかなければいけないというような世の中を作っていかなきゃいけないことになると思いますので、いろんな取引ルールもそうですし、それから行政的な許認可的なところもそうしたものの中で裁量権を適切に行使していかなきゃいけないっていうような時代がますます来ると思いますので、法制度全体をそうした形に変えていくというようなアジャイルガバナンス的な取り組みというのにも大きく注目をさせていただいています。それからブロックチェーンとかいったようなもので今まで取引が成立してこなかったところにトラストが確保されることになって、いろんな新しい信用創造の作り方ができていたりですとか、あるいは最近AIというのもいろんな使い方が議論されていますけれども、ヒューマンクリエイティビティといったものをコアに掲げて、これからそれを世の中でどういうふうにドライブしていくかという、ここは譲れないところかと思いますので、そのあたりがどんなふうにドライブしていくかというところに着目をしております。
馬田
アジャイルガバナンスの取り組み、本当に法制度全体をもっとアジャイルにしていく、そういうガバナンス全体をアジャイルにしていくというふうなところと、テクノロジーを使った新しいガバナンスみたいなところがお話の中にあったのかなというふうに思いました。
馬田
池田さんからもし何か注目してるものあれば教えていただいてよろしいですか。
池田
私からは制度そのものというよりは、政策形成のあり方自体なんですけれども、最先端のアカデミアの知見を取り込んでいく、行政サイドでもっと取り込んでいくっていうことに大きなイノベーションの余地を感じています。私自身も今の内閣官房のポストで昨年今年と米国の経済学会や経営学会に実際に行ったり、最近の海外の論文をいろいろ読んで、そこから知見を取り出して政策議論に生かしていくということに少しずつ携わっていて、すごくやりがいを感じています。やっぱり今前例踏襲とか予定調和とかそういう時代ではもう決してない中で、政策自体もすごいクリエイティビティというものを求められていると思うんですね。なのでその一つのソリューションの方向性として、知の巨人の肩に乗って、アカデミアの最先端の知見というものにアンテナを張って取り込んでいく、そういうことが重要になってきているのかなというふうに思っています。
馬田
なるほど。本当にEBPMとか言われて久しいですが、よりアカデミックの知見を生かして、本当に効果的な政策を作っていくっていうのは確かに、これまでもやってこられたと思いますがさらに今後、やっていけるのかなというふうに聞いてて思いました。ぜひ皆さん、今後もしかしたらまた中原さんと池田さんがそのあたりで本を書いてくれるんじゃないかと期待しつつ。次の本のトピックとして期待しております。
馬田
ではまた本の方に戻って、冒頭でもお伺いしましたが本当に今回の本、ものすごく率直に語られてる書籍だなというふうに感じてまして、その構成にしたご理由も先ほどお話いただきましたが、もしそのあたり、この本の構成こういうふうにした理由とか背景とかあれば改めてお伺いしてもよろしいでしょうか?
中原
ルールメイキングに関する本ということで皆様おっしゃっていただいていただいてるんですけれども、私はですね、ルールというとロジカルなものが当然にあるんですけれども、これを手触り感よく右脳的に感覚を持って、感じるように理解するというのが必要なんじゃないかなというふうに思ってまして、よく専門家って言われてる人に考えをお伺いするとですね、まずルールを見なさいとか言うんですけど、そこから演繹的に答えが出ますとか言う形でお話を頂くんですけれど、話を伺っておりますと、あなたはそれ結論から考えてない、って思ったりすることもあると思うんですね。それ自体もそんなに非常識なことではなくて、論理的な捉え方のみならず、右脳的、感覚的、皮膚感覚的に理解していくというような形で、そしてそれをルール形成に繋げていくというようなことをですね、ルールを通じて事業を行っている事業者の皆様ご自身がですね、ルールメイキングを専門的な問題ではなく自分の問題として考えていただくというような世の中にすべきだろうというふうには思っていまして、そういったことに少しでも貢献できればという観点からできる限り率直に書かせていただいたということで、担当行政官の皆さんもそんな形で書いてもらったというところかと存じます。
馬田
結論だけ教えてほしいみたいな人もいるかもしれませんが、逆にプロセス、過程こそが今回大事な本で、そこを感じてほしいという意図が今しっかりとこれから読む皆さんに伝わると読み方が全然変わってくるんじゃないかなと個人的に思いました。
中原
本当にご指摘いただいたようにですね、結論だけ教えてくださいって方は確かにいらっしゃるんですよね。それは問いと結論だけを知りたいっていう形になるんですけれども、その問いを作った時点で、ある事象をかなり抽象化しているので、似たような問題が起きたときに何を抽象化してるかっていうところがわからないと、紋切型の答えでこれは駄目だよねとか言って諦めちゃうっていうようなところがあって、そうするとそこの抽象化したスペースの中に新しい種があるところがなくなってしまうので、そういったところをですね何か拾い上げる努力っていうのはやっぱりしていかなきゃいけないんじゃないかなということでございます。
馬田
池田さんからも何かありましたらお願いします。
池田
私からは、行政の新しいコミュニケーションのあり方ということでお話をさせていただきますと、官民共創を進めましょうっていうメッセージの本なんですけれども、やっぱり官民共創を進めるためには、その前提として相互理解が大事で、さらにそのためには適切な自己開示が必要だというふうに思いました。そういうわけで普段なかなかオープンにされることのない行政官の熱い想いだったり、思考プロセス、先ほど中原さんからもお話あった通りなんですけれども、そういうものに踏み込んだというのがこの本の特色であると思っています。なので、実際読んだ方から、そのリアリティに対するある種の驚きだったり、感動みたいなものが寄せられることが多いんですけれども、実際にやっぱりこういった大きな挑戦をするからこその試行錯誤の日々だったりとか、役人だって時には眠れぬ夜を過ごすことだってありますし、あるいは前例のない法的論点ってどうやって乗り越えていくんだろうみたいなものがギュッと詰まっているというのは、改めてこの本のセールスポイントかなと思います。他方で行政官だけでは決してなくて、時代の変革者たちの声でスタートアップとか自治体とかあと評価委員の先生方ですね、インタビューを通じてそういった前線で活躍される皆さんのダイレクトな声も収録しています。今回行政のコミュニケーションのあり方という意味でも新しい試みをしたつもりでしたので、馬田さんにはまさにその辺を読み取っていただけて嬉しく思っております。
馬田
本当に珍しい本だと個人的には、官僚の皆さんが書くのはもっときっちりとした、かっちりとしたものみたいな印象があるんですが、本当に今回生々しくて、行政官の皆さんの人間らしさというか、1人の人間なんだなっていうのを感じられる書籍なのかなと思った次第でした。
馬田
ではそろそろ最後の方の質問になってきますが、ぜひ今後の官民共創のイノベーションといいますか、今後の政府とスタートアップのオープンイノベーション、今後どうなっていくのか、ぜひお2人の私見で結構ですのでお聞かせいただいてもよろしいでしょうか?
池田
さっきの質問との繋がりで私の方から最初にお答えさせていただきますと、それこそ2022年に策定されたスタートアップ育成5か年計画を通じて、環境整備っていうのが今もう一気に進んでいる状況だと思うんですね。そうすると今後そこで産み育てられたスタートアップが、急成長を遂げて、それこそ社会で破壊的イノベーションを起こしていくっていうときに、やっぱり先ほど申し上げた通り、政府が適切なルールメイキングとか、公共調達っていうものを通じて新しい市場の創出を引っ張っていくことが一層重要になると思っています。私自身もそこにすごく貢献していきたいという思いが個人的に強いです。なので、ルール形成とかルールメイキングという言葉も、私がルールとイノベーションみたいなものをライフワークにし始めた10年前は、まだまだ、そういうこと言っている人もいるねというような感じだったんですけれど、今や本当に市民権を得てきていると思いますし、社会的にも今こうやって変革の機運が高まっている中で、この本が、ますますスタートアップが盛り上がっていく社会の中で、急成長を助ける一助になったら嬉しいなというふうに思っております。
中原
これまで伝統的に社会課題だというふうに考えられていたことというのは、なかなかビジネスで解決することは必ずしも容易ではないかもしれないので、何らか国家的な財政的な支出を伴って解決していこうというようなことが基本路線だったかと思うんですけれども、いろんな新しい技術の発展といろいろな民間セクターでの知恵の集積によって、社会課題があるっていうことはいわゆるビジネスチャンスがあるっていうことなんだというような捉え方もできるようになってきている側面もあると思います。スタートアップの皆様のそうしたこうした課題を新しい技術と知恵で解決していこうというようなことに対して政府が建設的に組み込まれていくことによって新しい付加価値といいますか、新しいマーケットの創出と社会課題の克服というのができるようになっていくのではないかというような希望も持っておりますし、それが場合によっては今まで手が届かなかったところにも手が届くようになっていくというようなことになれば本当に素晴らしいのではないかなというふうに思ってまして、政府もしっかり取り組まなければならないということではないかなというふうに思います。
馬田
お2人の話を聞いてると本当に今後も政府とスタートアップの官民共創のイノベーション、オープンイノベーションがどんどん新しい形でも起こっていくんじゃないかなっていうふうな期待が持てたなというふうに思いますので、ぜひこの辺り一緒に考えさせていただきながら、私の方でもスタートアップのご支援しながら新しいオープンイノベーションの形を考えさせていただけばと思います。
馬田
最後にぜひリスナーの皆さんにそれぞれお2人からメッセージいただいて終わりにさせていただいてもよろしいでしょうか?
中原
役所の中にいる人間も企業の中にいらっしゃる方も同じだと思うんですけれども、非常に面白い将来に繋がるようなアイディアをお持ちの方っていうのはたくさんいらっしゃるというふうに確信をしております。ただそれが直ちに実現に至らなかったりとかすることもあるんだと思うんですけれども、そうしたご提案を受けたときに、上に立つ者がですね、そうした隠れた貢献に気づいてそれをどうやったら実装できるように持っていけるかということにできる限り意を払うべきではないかと思います。そして今度はそうした提案をする人はですね、1回提案して駄目だったときに、「もう辞めてやる」とかいうのではなくてですね、次に実装の提案を受け入れてもらうにはどうすればいいかというようなことを虎視眈眈とストックしていって、来るべきときにドーンと出すというようにですね、チャンスをうかがっていただきたいというふうに思っております。社会全体としては、私自身も含めてそうなんですけれども、やっぱりどうしてもイノベーションするときに失敗は今より増えるということは必然だと思いますけれども、それを今後の資産として受け止めていく覚悟が必要だと思います。更に、大きな成功をした者に対しては、いわゆる嫉妬、ジェラシーに基づいて冷たい目で見ていくのではなくて、それを温かい目で見てみんなで育て上げていくというような社会認識といいますか、そういったようなことで私達自身がそういうふうに変わっていかなければいけないのではないかというふうに思っております。そんなことの第一歩としてご覧いただければ誠に幸甚であります。
池田
今回本を出版したからこそ初めてお会いできた方々がいらっしゃるんですね。普段なかなか接点がないような違うフィールドにいたとしても、あるいは所属組織のヒエラルキーといったものによらず、この本を出したことをきっかけにすごく共感、共鳴することができたという、そうしたいくつかの得難い出会いが最近ございまして、個人的にすごく感動しました。それで思ったのは、先ほどの中原さんのお話にも通じるところがあるのですが、やっぱりこの社会、あらゆるところに挑戦者はいらっしゃって、今ことさら変革の時代においてそうした方々が顕在化してきているということを改めて感じまして、これは私自身も官の立場で引き続き熱い気持ちを持って日々公務に邁進していきたいなと改めて思っております。
馬田
最後の熱いメッセージありがとうございます。ぜひこの本をきっかけに本当に官民共創がより進んでいけばいいなと思っておりますので、今回聞いたリスナーの皆さんがより立体的にこの本を読んで、ぜひ一歩挑戦する。そして失敗を恐れずに次に進んでいくということの一助にこの会話がなればいいなというふうに思っております。お二人とも今日はPEP Talkにご出演本当にありがとうざいました。引き続きよろしくお願いします。