海外シンクタンクの議論を日本語で読み解き、日本のビジネスや政策への含意を考えるポッドキャストシリーズ 「PEP Think」。...
今週の PEP Think:競争が先行する領域のルール設計、国家能力は制度設計が左右する
海外シンクタンクの議論を日本語で読み解き、日本のビジネスや政策への含意を考えるポッドキャストシリーズ 「PEP Think」。
今回は、「競争が先行する領域のルール設計」と「国家能力は制度設計が左右する」という2つのテーマに基づいて、月面・深海・デジタル市場という新たなフロンティアにおけるルール形成と、予算・人材・契約という国家能力の基盤設計を考える2本のエピソードをお届けします。
競争が先行する領域のルール設計 ― 月面・深海・デジタル市場に共通するルール形成の課題
1 本目のエピソードでは、新しい技術や資源の開発が現実味を帯びるなかで、どのような活動を、どのようなルールで運営するのかという問いが前面に出てきている状況を取り上げます。月面資源開発をめぐる国際ルールの空白、深海採掘をめぐる太平洋地域の環境・主権・地政学、そして EU のデジタル規制における執行体制の設計という3つの論点から、アクセス・透明性・正当性・監査・説明責任まで含めた制度設計の課題を整理します。
月面資源競争 ― 月面資源をめぐる競争と国際ルールの空白(RAND)
RAND の「The Race to Mine the Moon Is On—And It Urgently Needs Some Clear International Rules」をもとに、月面資源の競争が採掘技術や所有権の話にとどまらず、誰がどこに着陸できるのか、どのような運用ルールを設定するのかという制度設計の問題として議論されている状況を紹介します。
水氷などの資源が集中する地点では、安全区域や排他区域が将来の摩擦の火種になる可能性が指摘されています。本エピソードでは、月面環境の保全や科学研究との両立を含め、主要宇宙国のあいだでどのようなルールを整備するのかについて議論しています。
深海採掘の地政学 ― マンガンノジュール資源と太平洋の政治(Lowy Institute)
Lowy Institute の「Deep-sea mining: Australia's dilemma in the Pacific」をもとに、電気自動車や再生可能エネルギーの拡大に伴い関心が高まる深海のマンガンノジュール資源をめぐる問題を紹介します。
深海採掘は資源開発の機会だけでなく、深海生態系への影響や太平洋島嶼国の政治関係にも波及します。本エピソードでは、環境保全、地域外交、資源戦略のあいだでオーストラリアが難しい判断を迫られている状況を分析しながら、重要鉱物の調達と環境・外交のバランスについて議論しています。
デジタル規制の実装 ― ルールより執行体制が問われる段階へ(Bruegel)
Bruegel の「The case for a European Union digital enforcement authority」をもとに、EU のデジタル市場法(DMA)やデジタルサービス法(DSA)をめぐる議論が、ルールの内容から執行体制の設計へと移りつつある状況を紹介します。
規制をどのような体制で執行するのか、政治的圧力からどのように独立性を確保するのかが重要な課題になっています。本エピソードでは、特に DSA について欧州委員会とは別に独立した執行機関を設ける案を取り上げ、規制の実効性を左右する制度設計の論点を議論しています。
国家能力を支える制度 ― 予算・人材・契約が決める実行力の条件
2 本目のエピソードでは、国家能力は予算総額や政策目標だけでは決まらず、予算をどう点検するか、人材をどう育てて定着させるか、新しい技術をどう契約まで届けるかといったような制度設計が結果を左右するという問題を取り上げます。ジェンダー予算の法制化、防衛産業の技能人材、防衛調達とスタートアップという3つの論点から、予算・人材・契約を通じて国家能力をどう持続可能な形で作るのかを考えます。
ジェンダー予算の法制化 ― 予算の公平性をどう続く仕組みにするか(Lowy Institute)
Lowy Institute の「Australia needs to put gender-responsive budgeting into law」をもとに、予算の意思決定にジェンダー分析をいかに制度として埋め込むべきかという論点を紹介します。
オーストラリアは 1984 年の Women's Budget Statement でジェンダー予算の分野で先行した一方、法制化しなかったため連邦レベルでこの制度は 2013 年に廃止されました。本エピソードでは、単にいくら支出したかではなく、誰の時間や所得安定、就業継続がどう変わったかというアウトカムを見る必要があること、日本も法的裏付けを欠いており他人事ではないことが議論されています。
防衛生産力と技能人材 ― 兵器の数ではなく、作って直す人の数を見る(Lowy Institute)
Lowy Institute の「Can the US train enough welders to win a war?」をもとに、防衛力の議論が兵器や予算に寄りがちななかで、戦時の増産で本当にボトルネックになるのは技能人材だという問題提起を紹介します。
COVID-19 時の人工呼吸器増産でも生産が軌道に乗るまでに数か月かかっており、溶接工や配管工の不足が防衛生産力における現在進行形のボトルネックになっている状況が整理されています。本エピソードでは、防衛産業政策は需要保障付きの労働市場設計でもあるという視点から、訓練・定着・修理能力まで含めて考える必要や、日本にとっての修理・部材・周辺技術の機会についても議論しています。
防衛調達とスタートアップ ― 問題はアイデア不足ではなく契約不足(Bruegel)
Bruegel の「Reforming European defence procurement to boost military innovation and startups」をもとに、新しい技術やスタートアップが注目されても実際の装備として採用されるとは限らない、という問題を紹介します。
欧州では上位 10 社が調達の 67〜90% を占め、既存の取引関係や承認手続き、市場の分断が新規参入の壁になっていると整理されています。本エピソードでは、研究開発や資金だけでは足りず、試作から量産までの契約のラダー、再発注率、現場配備までのリードタイム、非トップ 10 企業への調達比率などを視野に入れ、需要と契約をどう設計するかが重要だと議論しています。