今週の PEP Think: 日本は信頼と武装を両立できるか、「攻撃される前提」でのレジリエンスの設計図
海外シンクタンクの議論を日本語で読み解き、日本のビジネスや政策への含意を考えるポッドキャストシリーズ 「PEP Think」。
今回は、「日本は信頼と武装を両立できるか 」と「攻撃される前提でのレジリエンスの設計図」という2つのテーマから、日本が信頼される国であり続けながら安全保障を強化できる条件と、サイバー防御・エネルギー・外国干渉を横断する危機対応の制度設計を考える2本のエピソードをお届けします。
日本は信頼と武装を両立できるか
1 本目のエピソードでは、オーストラリア・NZ の世論調査で日本がアジアで最も信頼される国になっている背景、米中の戦略的小康状態を次の競争の仕込み期間として捉える視点、そして日米同盟の中で日本を不可欠な同盟国にしていく戦略という3つの論点から、信頼される国は武装してもなお信頼され続けるのか、その信頼をどう供給網・産業・同盟の設計に変えていくのかを考えます。
豪州・NZで高まる対日信頼 ― 安心して組める日本は続くのか(Lowy Institute)
Lowy Institute の「Japan is now the most trusted Asian power in Australia and New Zealand」をもとに、豪州・NZ の世論調査で日本がアジアで最も信頼される国になっている背景を紹介します。
中国不信と米国への安心感の低下の中で、日本が予測可能で、価値観が近く、文化的にも親しみやすい国として選ばれ始めていることが整理されています。エピソードでは、平和国家ブランドの上に成り立つ信頼がより武装する日本にも引き継がれるのかが問われていること、さらに観光、教育、研究協力、供給網連携まで同時に走らせる設計が必要になることについても議論しています。
米中の戦略的小康状態 ― 和解ではなく、次の競争の仕込み期間(Foreign Affairs)
Foreign Affairs の「Trump, Xi, and the Case for Strategic Calm」をもとに、米中の戦略的小康状態を和解ではなく次の競争に向けた準備期間として捉える視点を紹介します。
レアアース、磁石、重要鉱物、防衛産業基盤、備蓄、長期購入保障といった論点が整理されています。エピソードでは、握手や会談よりも在庫・加工・国家能力の方が重要だという見方、日本にとってもエネルギー安全保障や自動車、電機、化学、医薬、物流に直結する話であること、そして安い調達ではなく止まらない調達への転換が求められていることについても議論しています。
日米同盟の再設計 ― 日本は必要とされる同盟国になれるか(Foreign Affairs)
Foreign Affairs の「How Takaichi Can Triumph」をもとに、高市政権の戦略を踏まえたこれからの日米同盟戦略を考えます。
カナダのマーク・カーニー首相の中堅国連携路線と対比しながら、米国から離れるか米国に従うかではなく、米国を軸に欧州・インド・豪州などとの連携を重ねて日本を依存する同盟国から依存される同盟国へ移していく発想が取り上げられています。エピソードでは、FOIP の継続、ミサイル共同生産、重要鉱物、AI、司令・調達・保守整備を含む同盟運用と、そこから生まれる対中報復リスクや財政の持続性についても議論しています。
攻撃される前提でのレジリエンスの設計図
2 本目のエピソードでは、攻撃を受けない前提で制度やインフラを組む時代が現実に合わなくなっている中で、ウクライナのサイバー・レジリエンス、攻撃下のエネルギー供給、外国干渉のネットワーク分析という3つの論点から、被害をゼロにすることではなく攻撃や介入を受けても機能と信頼をどう維持するかという視点で、「攻撃される前提」でのレジリエンスの設計図を考えます。
ウクライナのサイバー・レジリエンス ― 侵入を防ぐより、国家機能を継続できるか(Atlantic Council)
Atlantic Council の「Wartime Ukraine offers global lessons on the future of cyber resilience」をもとに、戦時下のウクライナから見えてくるサイバー・レジリエンスの発想を紹介します。
攻撃を防ぎ切ることよりも行政、金融、通信、市民サービスを継続できるかが本当の勝負になっていることが整理されています。エピソードでは、レジリエンスを技術論ではなく国家運営の設計として捉える必要があること、侵入防止率だけでなくサービス継続時間や復旧訓練を KPI として見る発想、そしてウクライナを支援対象としてだけでなく実践モデルの供給源として学ぶ視点についても議論しています。
攻撃下のエネルギー ― 復旧速度と代替経路が安全保障になる(Atlantic Council)
Atlantic Council の「Energy under attack: What the Gulf can learn from Ukraine and Iraq」をもとに、イランによる湾岸施設への攻撃を受けて、エネルギー供給をどう継続するかを考えます。
エネルギー設備が単なる経済インフラではなく戦場の目標になっていることを踏まえ、脆弱点のマッピング、予備品の前置き、代替経路の確保が整理されています。エピソードでは、分散電源やマイクログリッド、水、サイバー、物流まで含めてインフラ全体のレジリエンスとして見直す必要があること、日本にとっても備蓄、海運・保険、調達の柔軟性、分散電源の設計に直結する話であることについても議論しています。
外国干渉をネットワークで捉える ― 個人摘発では見えない構造(Macdonald-Laurier Institute)
Macdonald-Laurier Institute の「Hiding in plain sight」をもとに、カナダの文脈から外国干渉をネットワークとして捉える視点を紹介します。
現行制度は外部からの資金や明示的な働きかけは捉えられても、影響力を生む関係の構造そのものは捉えにくいことが整理されています。エピソードでは、ベースライン・ネットワークマップを整え審査や監視の資源配分に生かすべきこと、ディアスポラ全体を疑うのではなくどの関係構造がどの具体的行為と結びついているのかを証拠に基づいて見る必要があること、さらに大学・研究機関との連携や政治周辺へのアクセスまで含めて日本にも関係する論点であることについても議論しています。