コンテンツまでスキップ

今週の PEP Think: 「石油危機が問い直す世界の脱炭素政策」、「労働政策の最新論点整理」

海外シンクタンクの議論を日本語で読み解き、日本のビジネスや政策への含意を考えるポッドキャストシリーズ 「PEP Think」
今回は2本のエピソードをお届けします。1本目「石油危機が問い直す世界の脱炭素政策」では、化石燃料ショックの時代に脱炭素政策をどう位置付けるべきかを考えます。2本目「労働政策の最新論点整理」では、AI・社会保障・移民を横断する労働政策の見取り図を整理します。

石油危機が問い直す世界の脱炭素政策 ― クリーン電力・気候外交・グローバルサウス

1 本目のエピソードでは、「石油危機は脱炭素政策を止める理由になるのか、それとも化石燃料への依存を減らす理由になるのか」という問いを立てます。世界の電力転換、気候外交の再設計、グローバルサウスのエネルギー移行という3つの論点を通じて、化石燃料ショックの時代に脱炭素政策をどう位置付けるべきかを考えます。

再エネが担う電力需要増 ― 化石燃料を増やさずに成長できるのか(Ember)

Ember の「Global Electricity Review 2026」をもとに、2025 年の世界の電力転換を紹介します。

2025 年、世界の電力需要増のほとんどを太陽光発電と風力発電が吸収しました。低炭素電源の増加量も、世界の電力需要増を上回ったことが整理されています。エピソードでは、再生可能エネルギーが電力需要の伸びを支える中心技術になりつつあること、再エネが石炭を上回ったという大きな転換点について議論しています。また、昼間の太陽光を「いつでも使える電力」に変えるためには送電網・蓄電池・市場制度の整備が欠かせないこと、クリーン電力をどれだけ早く整えられるかが将来の製造業や立地戦略を左右することも論じています。

気候外交の構造変化 ― 地政学が協力の条件を変える(E3G)

E3G の「Geopolitics and climate cooperation for a world in flux」をもとに、気候政策が地政学と切り離せなくなっている状況を紹介します。

気候政策は、もはや環境政策の一分野にとどまりません。エネルギー安全保障・貿易・産業政策・開発金融と結び付き、国際秩序そのものに影響を及ぼす政策領域になっていることが整理されています。エピソードでは、中東の対立、エネルギー市場、貿易ルート、インフレ、米国政府の気候協力からの後退、中国の供給網支配が、気候協力の条件を変えていることを議論しています。そのうえで、クリーンエネルギー安全保障・開発金融・気候資金・官民連携・COP や G7 を通じた連合形成をどのように設計し直すかも論じています。

石油危機が移行を試す ― グローバルサウスの国家能力(New Security Beat)

New Security Beat の「A New Oil Crisis Stress-Tests the Global Energy Transition」をもとに、2026 年の石油危機をグローバルサウスにおけるエネルギー移行のストレステストとして捉える視点を紹介します。

フィリピンの事例を通じて、燃料輸入への依存・再エネ導入の遅れ・重要鉱物の加工能力不足・規制能力の弱さが同時に表面化していることが整理されています。フィリピンにはニッケル資源があるものの、国内で電池材料へ加工する力は十分ではありません。一方、インドネシアはニッケル加工を国内に取り込みましたが、加工工程の多くは石炭火力に依存しています。産業化が低炭素化と結び付かなければ、環境負荷を別の場所に移すだけになりかねません。エピソードでは、石油危機は脱炭素を遅らせる理由ではなく、再エネ・電化・低炭素の鉱物加工・送電網・公共交通・社会保護を一体で設計する理由になることを議論しています。

労働政策の最新論点整理 ― AI・社会保障・移民を横断する見取り図

2 本目のエピソードでは、労働政策に関する直近三カ月の海外シンクタンクの記事を横断して分析します。英語圏の国際機関・シンクタンクなどによる最近の論考10本を取り上げ、AI、社会保障・税制、子育て支援、フリーランス、移民、人手不足、GX 人材などのトピックを3つの論点に整理します。労働政策の最新の議論に関する見取り図を提供することが目的です。

論点1:AI 時代の労働政策 ― 曝露の測定とジェンダー差、人間中心のビジョン

AI が労働に与える影響について、ILO の「Workers' exposure to AI: What indicators tell us – and what they don't」、ILO の「Gen AI, occupational segregation and gender equality in the world of work」、Brookings Institution の「A people-first vision for the future of work in the age of AI」を取り上げます。

エピソードでは、労働者の AI 曝露をどう指標化するかの限界、生成 AI 曝露に見られるジェンダー差の構造、そして AI 時代の労働で求められる人間中心のビジョンの意味を整理しています。

論点2:社会保障と働き方の制度設計 ― 普遍的保護・誤分類・労働課税・親への移行

働き方の多様化と社会保障の関係について、ILO の「Universal social protection in changing labour markets: Protecting workers in all types of employment」、Economic Policy Institute の「Misclassifying workers as independent contractors is costly for workers and social insurance systems」、OECD の「Taxing Wages 2026: The Progressivity of Labour Taxation in OECD Countries」、Urban Institute の「Balancing Work, Child Care, and the Transition to Parenthood」を取り上げます。

エピソードでは、変化する労働市場における普遍的社会保護の論点、独立請負人の誤分類問題、労働課税の累進性と「税のくさび」の構造、そして仕事・育児・親役割への移行をどう両立させるかについて整理しています。

論点3:移民と人手不足 ― 地域経済との関係、Brexit の影響、GX 人材

移民と人手不足について、Brookings Institution の「Metro Monitor 2026: The relationship between immigration and regional economic performance over the past decade」、Centre for European Reform の「The impact of Brexit on immigration to the UK」、Center for Global Development の「Do We Have Enough Workers? The Case of Green Skills in the US」を取り上げます。

エピソードでは、移民と地域経済パフォーマンスの関係、Brexit が英国への移民流入に与えた影響、米国のグリーン技能市場の事例から見える GX 人材の需給を整理しています。そのうえで、日本への示唆についても議論しています。