安倍政権で女性政策は進んだ
まず辻先生から、「安倍政権でなぜ女性政策が進んだのか」について、1月に刊行された『検証 安倍政権 – 保守とリアリズムの政治』での検証結果を踏まえて伺いました。
第2次安倍政権下で女性政策は一定の前進がありました。
安倍政権がこのように女性政策を推し進めることができた理由として、辻先生は以下の4点を挙げました。
これらの要素が重なり合ったこと、また戦略的にアジェンダコントロールをしたことで、安倍政権は女性政策を進め、女性の就業率向上などの成果を上げました。
一方で、課題も残っています。
これらについては、ハフポスト記事で指摘されています。
「未婚のひとり親寡婦控除」適用への困難を乗り越えた鍵は?
未婚のひとり親への寡婦控除の適用は、安倍政権の女性政策のなかでも争点化しやすい政策でした。
今回のもう一人のゲストである木村弥生 前衆議院議員に、この政策についてお伺いしました。
未婚のひとり親に対しても死別や離婚と同様の寡婦控除を適用する取り組みは、二度の大きな苦難に直面します。
1つ目の苦難:2019年税制調査会
一つ目は、2019年の自民党税制調査会において、未婚のひとり親への寡婦控除適用が見送られたことでした。記事では、「未婚のひとり親への偏見、理解のなさ、伝統的家族観に基づいた根強い抵抗」が理由だったと指摘しています。
しかし、その困難の克服の鍵は「キーパーソンとの協力」。
2つ目の苦難:代案の浮上
二つ目は、「児童扶養手当の受給対象の未婚ひとり親に限定して寡婦控除を適用する」という案が自民党内で浮上したことです。
一見進んだようにも見えますが、この案を採用すると、年収500万円まで控除適用が認められている死別や離婚した家庭と差がつくことになり、根本的な差別は解決しません。
そこで、木村議員をはじめ、議員たちのさまざまな地道な戦いのドラマが展開されます(詳細は記事にて)。
結果、2021年から、年収500万円未満の未婚のひとり親に対して、寡婦控除が適用されるようになりました。
「キーパーソンとの協力」「賛同者を増やすための地道で徹底的な取り組み」「女性議員たちの連帯」など、取り組みの詳細はぜひハフポスト日本版記事をご覧ください。
「未婚のひとり親寡婦控除」適用についてもっと知りたい!
また、この税制変更についてより深く学びたい方には以下の記事・動画も参考になります。
政策起業家 ≠ 政治家
最後に。
PEPゼミは霞が関や永田町の「外」に居ながら政策に携わる方々に注目してきました。しかし、今回は実際に政府の「内側」で政治家として活躍された木村前議員をフィーチャーしています。
外にいる『政策起業家』と中にいる推進者の公務員・政治家は別の概念であるというのがPEPの基本理念です。官僚・政治家でなくとも、自ら経験やリソースを政策に投じ、公共課題の解決のために役立てる意志のある方は、皆、政策起業家になりえる。
そしてこれからの時代はそういった幅広い担い手が重要だ、とPEPは考えています。
質の高い政策を提起していくためには、政策過程の理解が欠かせません。政策起業家が官僚や政治家の良き公共的パートナーであるためには、実際の政策過程や「内側」の論理を熟知しておく必要があります。
「列伝編」はこのような理由から、政策起業家だけでなく法案や税制を実際に通していく政治家目線でのお話も伺い、ケースを紐解くことで学んでいます。
政策起業家がより活躍できるエコシステムのためには、政策の外側と内側の両方を巻き込んだコミュニティ形成と知見が不可欠です。
今後もPEPゼミ・列伝編では、過去の法案・予算・制度などの政策過程について具体的に取り上げていきますのでご注目ください!