2025 年現在、生成AIに対して大きな注目が集まっています。そして今後も発展して行くであろう生成AIは、多くの人たちの知的労働をエンパワーしてくれる可能性を秘めています。
生成AIで大量のアンケート回答を分類・集計する
政策検討の際には、多様な関係者や市民の声を得るためにアンケートを取ることが良くあります。
そんなアンケートの自由記述欄には、想定をはるかに超える量の声が寄せられることも少なくありません。しかし、
- 「テーマ別に色分けしてみても、粒度がバラバラで集計にならない」
- 「整理したいけれど、スタッフの時間が足りない」
など、せっかくデータを集めても集計や分析作業に膨大な手間や時間がかかってしまいます。
そんな集計に生成 AI(LLM)を活用する方法を解説します。
今回は、「自治体がスタートアップ連携に期待すること」について、その回答自体も生成 AI に 1,000 件作成してもらい、それを分析しました。現実に行われたアンケート調査ではない点、ご留意ください。
1. 分析軸の提案
まずは、考えられる分析の軸を提案してもらいます。
目的
添付 CSV(自治体職員が「スタートアップ連携に期待すること」を自由記述した回答)を短時間で俯瞰できるよう整理したい。
タスク
回答をあなたの判断で 3〜4 以上の独立した観点(軸) を設計し、各観点ごとにカテゴリを定義したうえで全回答にラベルを付与してください。
各観点についてカテゴリ別件数を集計し、傾向を要約してください。
最後に、設定した観点名(軸)を一覧で提示してください(後続の分析で使用する軸を選択します)。
留意点観点例:課題・目的/期待する支援内容/分野(テーマ)/連携段階 など。
カテゴリは重複を避け、互いに排他的かつ網羅的になるよう調整してください。
必要に応じて その他 カテゴリを設けても構いません。
2. 軸を選んで分析
1 で出力された軸の中から分析に使うものを選び、以下のようなプロンプトを入力・実行します。
目的
添付 CSV にある「自治体職員がスタートアップ連携に期待すること」の自由記述 1,000 件を、分野(テーマ) の観点で短時間に俯瞰し、打ち手の示唆を抽出したい。タスク
各回答を③分野(テーマ)の軸でラベリングしてください(該当が無ければ「その他」)。
テーマ別件数・構成比を集計し、上位テーマそれぞれについて キーワード例・典型的期待内容・想定連携手段 を 2〜3 行で要約してださい。
主要示唆(重点領域、事業化のヒント、追加調査ポイント等)を 5 点以内で整理してください。
ラベル付き CSV を以下 2 種で出力し、文字化けしないようにしてください。
- *_utf8bom.csv : UTF-8(BOM 付き) ‒ Excel/GSuite 向け
- *_sjis.csv : Shift_JIS ‒ Windows Excel 既定向け留意点
分析は日本語でまとめる。
カテゴリ判定はキーワード/文脈で機械的に行い、判断が難しいものは その他。
出力形式は:
① 集計表(markdown)
② テーマ別要約
③ 示唆(箇条書き)
④ CSV ダウンロードリンク
3. 集計結果と示唆
テーマ別件数・構成比
テーマ | 件数 | 構成比 |
---|---|---|
その他 | 322 | 32.2 % |
DX・行政IT | 259 | 25.9 % |
環境・廃棄物 | 129 | 12.9 % |
教育 | 78 | 7.8 % |
防災・危機管理 | 65 | 6.5 % |
ヘルスケア・福祉 | 58 | 5.8 % |
まちづくり・観光 | 47 | 4.7 % |
交通・モビリティ | 42 | 4.2 % |
農業・水産 | 0 | 0 % |
エネルギー | 0 | 0 % |
テーマ別キーワード・典型的期待内容・想定連携手段(抜粋)
テーマ | 主なキーワード例 | 期待内容の典型 | 想定連携イメージ |
---|---|---|---|
DX・行政IT | 行政DX, データ連携, AI, システム統合 | 効率的な行政運営・住民向けオンライン手続き | SaaS導入, API連携, PoC→本番導入 |
環境・廃棄物 | 廃棄物管理, 脱炭素, 循環型社会, 再エネ | ごみ収集最適化・カーボンニュートラル推進 | センサーネット+解析, PPAモデル |
教育 | 個別最適化学習, 遠隔授業, 教員負担軽減 | 学力向上・教育格差是正 | EdTech導入, 公設塾型実証 |
防災・危機管理 | ドローン, 被害状況把握, リアルタイムデータ | 初動対応迅速化・避難精度向上 | ドローン実証, AI解析ダッシュボード |
ヘルスケア・福祉 | 見守り, リモートケア, 高齢者安心 | 医療/介護リソース最適化 | ウェアラブル+クラウド, サブスクサービス |
まちづくり・観光 | インバウンド, スマートシティ, 都市課題 | 観光消費拡大・回遊性向上 | デジタル観光パス, MaaS×観光 |
主要な示唆(スタートアップ連携の方向性)
-
DX・環境が 4 割超を占める
国の「デジタル田園都市国家構想」や GX 政策と親和性が高く、補助金・実証フィールドの組み合わせでスタートアップ誘致が進む余地大。 -
“その他” が 32 % と最多
抽象的・複合的な要望が多く、追加分類(例:地域活性、産業振興、若者定住など)やヒアリングで真の課題を特定する工程が必要。 -
実装志向より“検討・PoC”段階の声が目立つ
自治体は先行事例を求めており、横展開可能な成功事例の可視化 が連携加速の鍵。 -
キーワードから見る連携手段は “SaaS導入” と “実証実験” の二極化
既製クラウドサービスの横展開と、ドローン・AI などハードを伴う実証の両極。調達手法(カタログ調達/対価有りPoC)の整備 がボトルネックになりやすい。
アンケートには個人情報なども含まれるため、生成 AI への入力可否については十分にご確認ください。
この例に限らず、生成 AI にダウンロードファイルやグラフなどを生成させると文字化けすることがあります。出力形式を指定することで解決する場合もありますので、試してみてください。
皆様からの生成 AI の活用事例についてもぜひお聞かせください。以下のフォームからご投稿をお待ちしております。