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政策起業を始めよう!Step 1「課題を見つける」

Artboard 1-Aug-06-2024-06-51-40-9832-AMPEP では現在、学生政策起業コンテストのエントリー受付をしています。ただ、「政策起業」というキーワードがまだあまりメジャーではなく、何からどのように始めれば良いのかが分からない、という声をしばしばいただいています。

本シリーズでは、政策起業に興味を持った方、特に PEP の政策起業コンテストへの応募を検討いただいている方に向けて、何から手を付けてどのように活動していけば良いのか、を概説しています。

  1. 課題を見つける(本記事)
  2. 見つけた課題を深掘りして、根本原因を特定する
  3. 解決策を考える
  4. 説明する

まず初めに注意事項です:
一連のステップは上から順にスムーズに流れれば良いですが、実際は行ったり来たりしながら進みます。順番が前後することもあります。また、得てして予想以上に時間もかかるものです。
なかなか前に進まないな…と思ったら、思い切って前のステップに戻ってみることや、既存の政策(解決策)の情報収集をすることも有用です。

1. 課題を見つける

1.1 最近困ったこと、周りの人が困っていると言っていたことを考えてみる

社会課題、というと安全保障や社会保障等のような比較的規模の大きなもののように聞こえるかもしれません。もちろん、そうした大きな問題に取り組むことも素晴らしいことですが、「ニュースで聞いたことがある」「よくわからないけれども大きな問題らしい」というくらいの方も多いのではないでしょうか。

社会とは、「人々が共同で生活し、相互に関係を持っている集団や組織」のことを指します。
つまり、地球、国、都道府県、市区町村、地域、学校、教室、クラス、家族等、それぞれが「社会」です。
先に挙げた安全保障や社会保障は、主に国レベルで検討がなされている課題であり、もちろん解決に向けた取り組みが必要ではありますが、話が大きすぎてなかなか手が出しづらかったり、手触り感のある情報がなかなか出てこなかったりするかもしれません。また、多くの専門家が議論を重ねている領域であるため、せっかく考えた提案が実は既に議論されていた、ということも往々にしてあるかもしれません。

そこで、自分の生活に目を向けてみましょう。最近の生活を振り返って、「困ったな」「不便だな」と思ったことはありませんか?もしくは、家族や友達から「この間こんなことがあって困ってしまって…」という話を聞いたことはありませんか?

例えばこんな事例があります。
「普通のママさん」達の声が政策に反映されるまでの1年間の軌跡。新宿区で「保育園の使用済みおむつ持ち帰り問題」が解決するまで。

新宿区では、元々園児の使用済みおむつを、毎日保護者が持ち帰らなければいけませんでした。保護者の方々は、重い荷物を持ち帰らなければならなかったり、衛生面を考えて帰りにスーパーに寄りづらかったりとすごく大変な思いをしていたそうです。
この記事で紹介されている保護者の方々は、これをなんとかしたいと思い、行政に働きかけを行い、最終的におむつは保育園内で処理してもらえることになりました。(詳しくは元記事をご覧ください!)
まさに、自分の身の回りの課題を政策への働きかけを通して解決した好事例と言えるでしょう。

ここではいきなり解決まで至った事例を取り上げましたが、このように考えてみると「もっとこうなっていたら良いのに…」というようなことはたくさんあるのではないかと思います。

また、自分や近しい人が実際に経験している困りごとの場合、「何がどのように困るのか?」を具体的に話せる、という点も大きなメリットです。特に上記の事例の場合、「園から持ち帰るものは他にもたくさんあって、うちは2人の息子のぶんと私の荷物を合わせると6〜7kgくらい。更に体重約10kgの弟を抱っこして、走り回るお兄ちゃんを追いかけながら帰宅するんです。」というような実体験は、何よりの説得材料になります。

自分自身の生活を見直してみたり、家族や友達との会話を振り返ってみたりしながら、「どのような社会で暮らしていきたいか?」「その理想に対して現状の社会はどのようになっているか?」「イコールでないのであれば、何が差分なのか?」を考えてみると、自分にとって身近な社会問題が浮かび上がってくるかもしれません。

 

1.2 理想の社会を描き、現状との差分を考える

大前提として、政策は社会問題を解決するための手段です。そのため、まず初めに「あなたが解決したい社会問題とは何か?」を考える必要があります。そして、社会問題を考える際には、セットで「現状はどうなっているのか?」「理想の社会状態はどのようなものか?」ということも考える必要があります。

社会問題は現状と理想の差分(ギャップ)です。理想的な社会があるのに、現状は様々な理由でそうなっていないから問題となっているわけです。(この、様々な理由については、次の記事で触れたいと思います。)

例えば、フードロスの問題を考えてみましょう。農林水産省の調査によれば、2021年度の日本全体の食品ロスの総量は523万トン、事業系食品ロス量は279万トン、家庭系食品ロス量は244万トンでした。なお、前年度(2020年度)からは1万トン増加しています。これが現状です。

では、理想の社会とはどのようなものでしょうか。これは、もしかすると人それぞれで違うかもしれません。もちろん食品ロスはなるべく減らした方が良いでしょうから、ロスゼロはもちろん理想です。
一方で、現実問題、ロスを完全にゼロにするのはかなり難しいことです。例えば、ご家庭でも突発的な予定が入って料理をする暇がなかなか取れず、食べ物を腐らせてしまい泣く泣く廃棄…ということはあることでしょう。また、レストランやスーパーマーケットでの廃棄もなるべく減らしたいところではありますが、一方で仕入れを減らしすぎると早々に売り切れてしまう、ということもあり、毎日ぴったりの仕入れをすることは極めて困難です。こうしたことを考慮した場合、例えば「10年以内に食品ロスを半分にする」というのも、理想の社会になるかもしれません。

ここで、「10年以内に」という言葉が急に登場しましたが、理想の社会を考える際には、それをいつまでに実現したいか、という時間軸も重要です。1年以内なのか、10年以内なのか、100年以内なのかによって、難易度も取り組み方も大きく異なってきます。

※ちなみに、フードロスに関しては「食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針」で、2000年度比で2030年までに事業系・家庭系ともに食品ロス量を半減させる、という目標を設定しています。

 

政策起業の最初のステップは、自分が取り組んでみたい社会問題を見つけることです。その中で、何が問題か?を定義することは、簡単そうで案外難しいものです。
第一歩として、身の回りの困りごとに意識を向けてみる、そしてそれがどうなっていたら良いか、という理想を考える、というステップを通して、まずは「問題を見つける」ことからはじめていただけるとよいのかなと思っています。

 

文責:蛯谷(PEP プログラムオフィサー)