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オンラインイベント「AI 🧠と読み解く衆院選 2026 ― 各党の政策を AI と分析する」開催報告

国際文化会館 政策起業家プラットフォーム(Policy Entrepreneur's Platform、PEP)は、2026 年衆議院選挙をテーマに、YouTube ライブイベント「AI 🧠と読み解く衆院選2026 ― 各党の政策を AI と分析する」を開催しました。
当日は、PEP ディレクターの馬田 隆明と、神保 謙氏(APIプレジデント/慶應義塾大学総合政策学部教授)が登壇し、PEP が開発・公開している生成 AI を用いた政策分析ツール「PEP by Tech」のデモを通じて、選挙公約や政策論点を多角的に読み解く試みを行いました。

アーカイブ配信はこちらからご覧いただけます:

イベントの趣旨

今回のライブ配信は、生成 AI が政策形成・評価に与える影響や今後の政策議論のあり方について、実際にツールを使用しながら議論することを目的としました。

PEP  が公開している「簡易政策チェッカー政策交渉 AI ナビ 」「政策討論シミュレーター」などのツール群を実際に操作しながら、2026 年衆院選で争点となっている政策を題材に、AI の分析結果とそれに対するコメントを行き来する形で議論を深めていきました。

冒頭で馬田からは、PEP のミッション「私たち一人一人が、公共政策を作る」が紹介され、その一環として政策起業家を支援する目的で生成 AI を活用した政策立案支援ツール群「PEP by Tech」を開発していることが説明されました。

ツール①:簡易政策チェッカーで「政策の筋の良さ」を可視化

最初に紹介したのは、「簡易政策チェッカー」です。

  • 政策の目的(例:物価高対策、安全保障の強化など)
  • そのための具体的な施策アイデア

といった情報を入力すると、生成 AI が「目的適合性」「効果・成果」「公平性・包摂性」「持続可能性」「財政・コスト」「社会的受容性」など複数の観点からコメントを生成し、評価のバランスをレーダーチャートで可視化するツールです。

ツールが示すスコアやコメントを見ながら、馬田・神保両氏が「どの点が評価されているのか」「どこにリスクや負担があると指摘されているのか」といったポイントを確認し、財政負担や将来世代への影響、公平性など、複数の観点からメリットとトレードオフを検討する議論が行われました。また、市民や政策担当者が政策案をチェックするツールとしての可能性にも触れました。

ツール②:政策交渉 AI ナビで「折衷案」を探る

続いて、「政策交渉 AI ナビ」を用いたデモを行いました。

このツールは、2つの立場や政党の政策文を入力すると、それぞれの主張や論点の違いを整理し、両者の間に成り立ちうる「折衷案」を提案するものです。

イベントでは、自民党と中道改革連合の政策文をもとに、安全保障や成長戦略、物価高対策といったテーマを入力し、AI が生成した論点整理と折衷案を確認しました。たとえば、安全保障のパートでは、段階的に取り組みを進めながらも、憲法上の制約や平和国家としての基本線を維持しようとする案など、複数の折衷案が提示されました。

神保氏は、国会の実務では与野党の間で妥協や取引を通じて法案が通っていく側面があることに触れつつ、対立した論点を整理し歩み寄りを探るツールとしての意義に言及しました。また、成長戦略のパートでは、「戦略分野への投資」と「人への投資」という異なる重点を組み合わせる発想も提示され、対立する主張の中から共通部分や同時に進めうる方向性を探るヒントになりうることが示されました。

ツール③:政策討論シミュレーターで多様な立場の意見を探る

三つ目のデモとして、「政策討論シミュレーター」を紹介しました。

特定の政策案(例として、台湾海峡情勢を踏まえた防衛力強化の方針)を入力すると、関連するステークホルダーのペルソナ(防衛省の担当者、企業、観光業、研究者、将来世代など)を AI が自動生成し、それぞれの立場から討論を行う様子をシミュレーションします。

イベントでは、防衛省職員、製造業の担当者、観光業関係者、研究者、東アジア安全保障の専門家、将来世代といった複数のペルソナが登場し、安全保障上の必要性、サプライチェーンや事業継続への影響、地域経済、国際関係、将来世代のリスクなど、さまざまな観点から意見が交わされました。

神保氏からは、「政策を推進したい側は、自分のロジックには詳しくなる一方、異なる立場を持つ人にどのような影響が出るかを考える時間が少なくなりがちだ」という指摘がありました。そのうえで、政策討論シミュレーターのようなツールを通じて、関係者ごとのプラス・マイナスや利害を事前に想像できることは、政策立案や合意形成のプロセスを考えるうえで有用だという趣旨のコメントがありました。さらに、討論の中で生まれた新たな政策アイデアを簡易政策チェッカーに渡して評価する、といったツール間の連携の可能性も紹介されました。

生成AIは「答え」ではなく「伴走者」

イベント終盤では、生成 AI と政策形成の関係について、両登壇者から今後の展望が語られました。

馬田は、現時点では生成 AI が「最適な政策の答え」を出す段階にはなく、あくまでアイデア出しや評価、論点整理、シミュレーションなどを通じて人間の政策作りを支援する存在だと位置づけました。そのうえで、今後 AI の性能が向上すれば、AI ネイティブなシンクタンクのような形で、政策案のプロトタイピングや検証がより高速に行われていく可能性にも言及しました。

また神保氏からは、フィルターバブルや社会の分断が指摘される中で、あえて対立する論点や立場を設計に組み込んだ政策分析ツールを活用することにより、対立する側の背景や問題意識への理解を深められるのではないか、という視点が示されました。そうした意味で、生成 AI をうまく活用することが、民主主義における議論の質を高めることにつながる可能性がある、という示唆が共有されました。

今後に向けて:PEP by Tech と政策起業家支援

PEP では、こうした AI ツール群を「PEP by Tech」として開発・公開し、政策起業家や実務家、市民が政策を「考え、つくり、検証する」ための環境作りを進めています。今回のイベントで紹介したツールも、主にオープンウェイトのモデル(gpt-oss-120b)を用いて運用しており、ユーザーの入力が学習に再利用されない形で、Web 上から自由に試していただけるようになっています。

もし「PEP by Tech」ツールに関するご意見や活用事例のご共有がありましたら、ぜひお問い合わせフォームからお寄せください。