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今週の PEP Think:テクノロジー競争と経済安全保障、AI時代のガバナンス設計

海外シンクタンクの議論を日本語で読み解き、日本のビジネスや政策への含意を考えるポッドキャストシリーズ 「PEP Think」
今週は、「テクノロジー競争と経済安全保障」と「AI時代のガバナンス設計」をテーマに、2 本のエピソードを公開しました。​

テクノロジー競争と経済安全保障

1 本目のエピソードでは、「テクノロジー競争と経済安全保障」をテーマに、Physical AI、レアアースの地政学リスク、AI競争をめぐる3本の論考を取り上げます。
ロボティクスや重要鉱物、フロンティアAIをめぐる動きを、日本企業や日本の経済安全保障戦略の文脈で読み解きます。

  • Physical AIの「実装ギャップ」──研究と現場のあいだにある深い溝(Andreessen Horowitz)
    The Physical Deployment Gap」をもとに、ビジョン・ランゲージ・アクションモデルやシミュレーションから現実への転移が進む一方で、倉庫ピッキングロボットなどが依然として限定環境にとどまっている現状を整理します。分布シフトや最悪ケースでの信頼性、遅延と性能のトレードオフ、WMSや安全認証との統合、保守・メンテナンス体制など運用面の課題を踏まえ、「ロボティクス版 DevOps」ともいえる運用設計や、現場データ・工程設計・サービス化ビジネスまで含めたエコシステムづくりを日本企業の勝ち筋として検討します。
  • レアアース輸出規制と台湾抑止──中国の「経済的シグナリング」と日本の課題(CSIS)
    CSIS の “China’s Rare Earth Campaign Against Japan” に基づき、2010年の尖閣沖衝突と輸出枠削減から、2026年1月の対日輸出規制に至る流れを振り返り、台湾問題と結びついた新たな段階に入ったレアアース輸出規制の問題を取り上げます。日本がライナスへの投資やベトナムとの連携などを通じて多角化を進めてきた一方で、対中依存が依然として大きい現実を整理します。その際、単なる輸入比率だけでなく、在庫日数や切り替えリードタイム、認証の取り直し、代替材設計といった「とまりやすさ」の要因や、中小・二次サプライヤーがボトルネックになりやすい構造にも着目します。さらに、輸出規制が供給停止だけでなく、通関遅延や許認可の恣意性を通じて不確実性を高める「抑止ツール」としても機能しているという視点から、日本の精錬・磁石化能力の強化や、レアアース周辺領域・代替材料におけるビジネス機会を議論します。
  • AI競争という神話──非対称的な「AI二極化」と日本の立ち位置(Foreign Affairs)
    Foreign Affairs の “The Myth of the AI Race” を手がかりに、米中AI競争を単一ゴールの「覇権レース」とみなす見方に疑問を投げかけ、フロンティアモデル、計算資源、技術・標準の普及、物理世界への統合という4次元の競争構造を整理します。米国と中国それぞれの強みや、中国の産業用ロボット導入規模、トランプ政権下でのH200輸出規制緩和が生みうる計算資源ギャップの変化、AI二極化が国内格差や政治的ショックを増幅しうる点を踏まえ、「どちらにつくか」ではなく、双方から学びつつ新興国向けインフラ支援や相互運用性のルールメイキングで日本が独自のポジションを築く可能性を検討します。

AI時代のガバナンス設計

2 本目のエピソードでは、「AI 時代のガバナンス設計」をテーマに、AI セキュリティ規制、AI コンパニオン市場、エントリーレベル雇用のレジデンシーモデルという3つの論点を取り上げます。
AI のリスク管理とデジタル空間の安全性、若手育成とキャリアラダーの再設計といった諸問題を横断しながら、日本の制度設計とビジネス機会を考えます。

  • AI セキュリティ規制の4つのモデル──ハードローとソフトローをどう組み合わせるか(RAND)
    RAND の「Four Governance Approaches to Securing Advanced AI」をもとに、原子力・化学・電力・医療情報など 7 つの高リスク産業のコンプライアンス制度を比較し、リーダーシップと専門組織、明確なセキュリティ要件、監査・報告による検証、違反時の執行メカニズムという共通要素を整理します。
    そのうえで、高リスク汎用モデル開発者への厳格な義務付け、政府調達を通じた認可、業界コンソーシアムによる自主認証、自主規制と官民協調を組み合わせた協働モデルという 4 類型を紹介し、セキュリティ強度・順守率・産業負担のトレードオフ、「高リスク AI 」の定義や監査可能性の確保、日本での制度設計や監査・認証・モデルセキュリティサービスなどのビジネス機会を議論します。
  • AI コンパニオン市場とデジタル空間の安全性──孤独の緩和と依存リスクのあいだで(Ada Lovelace Institute)
    The companionship market」をもとに、約 13 億ポンド規模・年 30 %超の成長が見込まれるイギリスの AI コンパニオン市場の現状を紹介し、孤独感の軽減や会話練習、恋愛的ファンタジーなど多様な用途がありつつ、利用が若年男性に偏っている点を整理します。
    ケア型・取引型・出会い型・混合型という 4 セグメントと、記憶への課金や過度な迎合による依存・行動影響リスク、Online Safety Act のスコープの抜け穴や年齢確認・データ保護の課題を踏まえ、若年層保護義務やブレイクメカニクス、過剰な迎合を避ける設計、データ移転ルール、ガイドライン・認証・保険・メモリーバンクなど、日本で検討しうる制度・ビジネスの可能性を考えます。
  • エントリーレベル雇用のレジデンシーモデル──AI 時代のキャリアラダー再設計(Brookings)
    Brookings の「To save entry-level jobs from AI, look to the medical residency model」を手がかりに、エントリーレベル職がルーチン処理と実務を通じた訓練という二重の役割を担ってきたこと、前者だけをAIで置き換えると後者の訓練機会とタレントパイプラインが失われる危険を整理します。
    医療レジデンシーのように、若手を「育成を目的としたレジデント」と位置づけて段階的に実務経験を積ませるモデルや、AI自動化で生じた余剰を原資とするワークフォース再投資基金、賦課金ベースの共同負担などの提案を紹介し、日本の新卒一括採用やリスキリング政策との違い、公共性の高い領域からの試行、標準カリキュラム・認定・仲介機関、レジデンシーOSや案件運営といったビジネス機会も含めて、AI時代の職業訓練とキャリアラダーの再設計を検討します。